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ちび魔トリスターナ: 進捗報告最終回

最終回となる今回は、バグ修正、PBEでのフィードバック、スプラッシュアートのタイムラプスで締めくくります!

今やちび魔トリスターナはいつリリースになってもおかしくない状態。つまり我らが「地獄のヨードル」の進捗報告も今回が最終回です。今回取り上げるのはバグ修正、PBEでのフィードバック、そしてスキンデザインの舞台裏についてです。

まずはちび魔トリスターナのスプラッシュアートイラスト制作のタイムラプス動画をご覧ください。なお、この過程については過去の進捗報告でも詳細に紹介しています。

ちび魔トリスターナをPBEへ送り出す

スキンの命名とバイオの執筆はどちらも最終盤になってから取り組む仕事です。もちろんどちらも開発開始時から考え続ける内容ではありますが、確定させるのはここまでたどり着いてからです。ちび魔トリスターナのような単発のスキンの場合、通常は仮の名前(今回は「プレイヤー投票トリスターナ」)と背景ストーリーに基づいて開発を進めていきます。今回はプレイヤーからのフィードバックに応え、スキン説明文(以下参照)に魅惑の魔女トリスターナスキンとの関連性を匂わせています。

地獄の偉大なる女王の一人となった魔女トリスターナは、下級悪魔の大軍を率いて「破滅」と「厄災」というこの世の闇を自在に支配するようになった。彼女は自身の持つ計り知れない力を利用しようとする者に対して、ありとあらゆる魅力的な契約を持ちかける。しかし、そうした愚かな人間は知る由もないのだ。彼女の狙いがその契約者、そしてこの世界を地獄の烈火で燃やし尽くすことにあることを。

スターガーディアンやPROJECTのような大規模テーマの場合は、スキンの開発中は常に背景ストーリーを意識し続けます。テーマに対する私たちの取り組みや思想については、私が書いたボードの投稿(英語)スキンの命名に関する/devブログをご覧になってみてください。

名前が決定したら、いよいよPBEに送り出してプレイヤーからのフィードバックを受け取ります。

品質管理(Quality Assurance: QA)を正しく実施すること

Alan “Riot KiWiKiD” Nguyen、シニアQAアナリスト: どうも、Alan “Riot KiWiKiD” Nguyenです。ちび魔トリスターナの開発では品質管理の責任者を務めました。品質管理の仕事は多岐にわたりますが、今回は健全な開発の保全、テスト、プレイヤーフィードバックへの対応という3つの要素に分解して説明してみたいと思います。

健全な開発体制の保全

品質管理部門はコンセプト制作と開発の期間全体を通じ、スキン開発にまつわる問題の最小化とプレイヤーに提供する価値の最大化を目指します。特にプロダクションの初期段階では、仕様がバグの原因や実装の複雑さにつながる可能性の大小を常に意識します。軽はずみな仕様決定が巡り巡って開発を難航させたり、早期発見できなかったばかりに対処が困難になったりすることはよくありますから。これを一定のレベルで判断し続けるには、質問するのが一番です。

たとえば特定のスキンがペットや眷属を連れるような仕様を追加する話になった場合は、「かかる時間(リギングやアニメーションなど)に見合うだけの価値をプレイヤーに提供できる?」や「スキンはペット/眷属と釣り合うものになる?」といった質問。ちび魔トリスターナの場合は翼が生えていたので、開発中には「翼の大きさは?」、「どの程度のサイズが適正?」、「身体とのバランスは取れる?」、「ロケットジャンプ(W)のときに見た目は変わる?」といった質問をしました。

通常モデルの小さな黒い翼とロケットジャンプ(W)時の大きく青い翼

品質管理部門が健全な開発体制を保全する上で重要なポイントのひとつに、プレイテストの手配業務があります。スキンのプレイテストは毎週行われ、毎回特定要素と総合的プレイ感の両方がチェックされます。また「テーマから離れすぎていないか?」を確認するのもプレイテストの役割です。スキンごとに具体的なフィードバックポイントと質問を用意し、プレイテスターの皆さんに意識してもらったり、回答してもらったりします。たとえば、以下は「ちび魔」スキン初回プレイテスト時の考慮事項・質問です。

「Red flag(赤フラグ)」は考慮事項です。たとえばこの時はトリスターナのULTが画面に広がってしまう、トリスターナの銃が消える、そして当時はリコール時に基本アニメーションが再生されてしまっていたので「リコールがブロックされている」とみなしました。

プレイテスト後はフィードバックをまとめてチームと共有し、受け取ったチームはこれを潜在的な要対処項目として考慮します。たとえば…

こちらのフィードバック2点については実際に対処を行いました。具体的にはヨードルグレネード(E)の自動効果を修正し、紫とピンクを増量しています。プレイテストは正義!

テスト

ちび魔トリスターナのテストの準備をするにあたっては、おかしな状態(バグや意図しない挙動)が見落とされない体制を整えるため、テストスイートを作成しました。これは簡単に言えば「テストの包括的なリスト」です。かなり細かいところまで網羅する内容であるため、テスト完了まで最大で2週間かかります。

テストスイートの一部:

このテストケースは、ちび魔トリスターナに対して特定のスキルやアイテムが使用された際に正しい処理が行われるかどうかを確認するものです。

品質管理部門ではスキンをテストする際、一般的な状況と稀にしか生じない状況の両方について実施しています。というのも、スキンでは通常のチャンピオンとはかなり異なる技術を使用していたり、他要素との干渉処理が変化したりする場合があるため、バグの原因となりうる要素が無数に存在するのです。たとえばルルとタム・ケンチ(「イタズラ」と「丸呑み」の悪夢…)がいる、VFXが画面全体を覆う、ボディに新規追加された部位にまだアニメーションがつけられていない、などなど。テスト中に私たちが問い続ける最大の質問は「このスキンはプレイヤーが期待したとおりに動作しているか?」です。これに対し私たちはテストしながら「VFXはすべてテーマに沿っているか?」、「サウンドエフェクトは適切か?」、「スタンを受けたらきちんとインジケーターが表示されているか?」といった質問に自問自答していくわけです。

以下は「ちび魔トリスターナ」のテスト中に見つかったバグの一部です。ご笑覧あれ!

1. 見落としがち: ちび魔トリスターナスキン使用時、スキル対象の周囲で影響を受けるユニットに対して通常スキンのVFXが表示されている。

バグ修正完了!

2. 視認性改善: ちび魔トリスターナのロケットジャンプエフェクトが移動不可能な地形に描画されている(「エフェクトが壁にめり込んでる」を専門風に表現するとこうなります)。この挙動を意図的に行うのはゲームを大きく左右するスキルに対してのみです。サモナーズリフトをエフェクトで埋め尽くしたくないですからね。

ちび魔トリスターナと通常のトリスターナ

3. 最優秀不可思議バグ大賞: バスターショット(R)をエピックモンスターに対して使用するとVFXがズレて表示される…これはいただけない!もちろんトリスターナのプレイヤーがバロンにULTを撃つことはめったにありませんが、バロンスティールや確保を狙うシチュエーションも考慮して要修正としました。

左:ちび魔トリスターナ、右: 通常のトリスターナ

プレイヤーフィードバックへの対応

スキンをPBEに導入したら、PBEプレイヤーがバグやフィードバックを投稿するためのスレッド(英語)を作成します。作成後はスレッドをよく読み、スキンの改善につながるフィードバックを探し続けます。また、Twitter、Reddit、世界各地のLoLコミュニティー・ボードも見回り、見落としたバグが存在しないかチェックしていきます。これらに対する回答は可能であれば行うようにし、最終的に対象スキンがより多くのプレイヤーに響くものとなるよう取り組み続けます。

スキンを制作する究極の目的は、プレイヤーをハッピーにすることです。そのためならば可能なことは全部やっていきます。今回もフィードバックや提案を寄せてくださった皆さんに心から感謝しています。本当に、ありがとうございました。

プレイヤーフィードバックの反映

Janelle “Riot Stellari” Jimenez,、プロダクトマネージャー: 「PBE上のチャンピオンに対するフィードバックを読んだ上で、何を変更するか(あるいはしないか)を決める」のはプロダクトリードという役職の中でもトップクラスに難しい仕事です。フィードバックとは主観的なものです。Aさんは青が好き、Bさんはピンクが好き。Aさんはチョコが嫌い、Bさんはチョコが大好き。誰もがハッピーになる選択というのはありえないため、チームが特定のフィードバックに同意するか否かはプロダクトリードが決めねばならないわけです。

たとえばかなり初期に寄せられたフィードバックのひとつに「炎っぽいVFXが龍使いトリスターナに似すぎている」というものがありましたが、これは「有意なかたちで差別化を図る」とプロダクトビジョン(そのプロダクトが目指す将来像)に加えました。またVFXの色を青と紫に変えた時は肯定的なフィードバックが多数派でしたが、中にはコンセプトから外れすぎていると感じた方もいらっしゃいました。当初は「ティーモの顔」だったEの爆弾を別のものに変えた変更も皆さんからの意見を受けて実施したことのひとつです。これについては「ちび悪魔ティーモが目立ちすぎていてトリスターナが霞んでしまっている」というフィードバックが多数届いた上、ティーモの存在によりスキンが「ジョーク寄り」のものへ変化していたと指摘されました。チームはティーモの顔を使うアイデアをとても気に入っていたのですが、これは他ならぬプレイヤー投票スキンですから、最終的にフィードバックを反映させることに決定し、爆弾はティーモヘッドからスピリットオーブへ変更しました。

それからPBE中も、肌の色合いをより鮮やかなピンクにしたり、牙を小さくしたり、髪の色をより白っぽくしたりと細かな調整を重ねています。これについては気に入ってくれた方もいれば変更前のほうが良かったという方もいました。ここで私たちはチームとして「これらの変更はスキンの洗練度を高めるものだ」と判断。変更内容をそのまま実装しています。このように、皆さんから寄せられるフィードバックとチームが考える優れたスキンのバランスは、いつも頭を悩ませ続けるポイントなのです。

これらが全て終わってすべてが満足できるレベルに達したら、スキンはようやくリリースとなります。

リサーチとメタ的選択: 「成功」をどう定義するか?

Chelsea “riot aeneia” Hughes、インサイトリサーチャー: 毎度どうも!Chelsea “riot aeneia”です。今回もインサイト(潜在的な心理や意欲を指すマーケティング用語です)について最新情報をお届けしていきます。プロジェクトの立ち上げから終了まで、何度となくフィードバックを提供していく…それが私の仕事ですからね!

インサイトとストラテジーを専門とする私の職務は、主に2つの要因から構成されます。まずはチームと協力してプロジェクト「成功」の定義を見極めること。ふたつめは、プロジェクトが「成功」に至ったかどうかをチームが評価するための支援です。一見すると「トリスターナの新スキン投票キャンペーン」はとてもシンプルなものに見えますが、その影では無数の意思決定が重ねられています。たとえば、プレイヤーにいくつの案を提示するか?最も望ましい投票形式は何か?投票してくれたプレイヤーへの報酬は何にすべきか?そして、キャンペーンのプレイヤー体験を確実に楽しいものにするには何をすべきか?といった具合です。ライアットは(つまり私たちひとりひとりは)データの取り扱いにプライドを持っています。正しい決断をするために役立つデータを常に探し続けているのです。

だからこそ、皆さんの協力が欠かせません。

トリスターナの新スキン投票キャンペーンが終わりにさしかかった頃、私は先述の質問の回答を導くためのアンケート作成に明け暮れていました。どうか皆さん、メールの受信箱チェックはお忘れなく!このアンケートは、次のプレイヤー投票スキンに関わる意思決定に生かされるものになりますから。

ゴールまでたどり着くために

Harald “Agile Harry”、シニアデベロップメントマネージャー: こんにちは、Harald “Agile Harry” です。スキンのデベロップメントマネージャーをしています。スキン制作プロセスの紹介はお楽しみいただけたでしょうか?僕はこれを専門にしていているので、楽しんでいただけていれば幸いです。私の仕事のひとつは、素晴らしいアーティストたち全員が、共通の目標を目指して協力していける体制を作ることです。今回なら「皆さんの投票で選ばれたトリスターナスキンを最高の状態に仕上げること」がゴールでしょうか。これを実現する上で整えた開発環境の基本要素は以下のとおりです。

制作期間の決定: まずは、スキンの制作に費やす時間を決めます。ちび魔トリスターナに1年をかければ過去最高のスキンが完成するでしょうが、プレイヤー側からすれば待つ時間が長すぎます。では1週間で作ればいいかというと、迅速にリリースできる代わりにクオリティで失望させることになるでしょう。「スイートスポット」はこの中間にあるわけです。

ちび魔トリスターナの場合、私たちは開発期間として4週間は必要だろうと想定しました。このようにして製作期間を切ることにより、難しい判断をしっかりと下す能力、そして限られた時間の中でプレイヤーに届ける価値を最大化する能力を鍛えていきます。

アートとプロダクトの「柱(注:Pillar(ピラー)、プロジェクトを通じて貫く実現目標)」: スキンの完成を判断する材料はいくつかありますが、その中でも特に重要なものがプロダクトとアートの両方に対して設定した「柱」が実現されていることです。今回の場合は、以下のような「柱」を設定していました。

  • 「エッジィ」ではなく、可愛らしく悪魔的
  • ちび悪魔ティーモの右腕となるヨードル
  • 威勢がよく活発

これらの柱が実現されたと判断したら、次の仕事はできる限り速くプレイヤーのもとに届けることになります。

職種混合チーム: スキン制作に携わる全アーティスト(サウンドエフェクトデザイナーだけは専門のサウンドルームが欠かせないため例外)は隣り合う席で作業を進めるのですが、この取り組みはとてもクールです。職種の異なるメンバーでチームを構成し、さらにアーティストが隣り合って座っていると、あらゆる角度からスキンについて話し合うことができるようになります。コミュニケーションが気軽かつ迅速に取れるのでコラボレーションが起こりやすくなりますし、変更を入れる時もチームの同意が取りやすいですから。どんな雰囲気になるかは、以下の写真で少しお分かりいただけるのではないかと思います。

チームの幸福度: プレイヤーに素敵な新スキンをできるだけ早くお届けすることは当然大事ですが、私たちはそれを作る開発者の作業ペースも「持続可能な」ものにしたいと考えています。そういう点で、社内で働くメンバーの幸福度というのは大事な指標です。これを高めるため、私たちはチームメンバーに対して可能な限りの配慮をしています。

幸福度を高める要因は様々です。熱心に取り組んできた内容が他のメンバーから評価されなければ落ちることがありますし、互いの仕事を認め合うことで高まることもあります。ライアットでは「振り返り」時にチームメンバーによる幸福度評価を実施しています。この結果は人事部門が集計した上でチームとして何が改善できるかを精査し、そのまま行動に移します。こうした協力体制のもと、私たちは互いの幸福度を高い水準で維持し続け、新スキン制作時に全力を発揮できるようにしているわけです。

パッチごとのチーム平均幸福度

おわりに

こうして今回の旅は終わりを迎えました。皆さんのおかげでちび魔トリスターナは最高の悪魔ヨードルスキンに仕上がったと自負しています(これ、ティーモには内緒でお願いしますね)。世界中のプレイヤーと共にスキンを作るこのプロジェクトは、メンバー全員にとってかけがえのない体験になりました。投票してくださった皆さんにはパッチ9.11でスキンがリリースされたらちび魔トリスターナアイコンをお贈りするので、受信箱の確認をお忘れなく(送付完了まで数日かかる可能性があります)!投票のチャンスを逃した皆さんも今年後半のブルーエッセンスショップで販売されるので楽しみにしていてくださいね。

それから、これまでの経緯を見逃していた方のために記事一覧を用意しました。未読のものがあればぜひご覧になってみてください。

トリスターナの新スキンは…: 投票結果を発表し、ちび魔トリスターナの制作をスタートしました。

スプラッシュアートとVFX: VFXの初期段階やスプラッシュアートの模索プロセス、そしてトリスターナを選んだ理由について語りました。

モデルとサウンドエフェクト: ちび魔トリスターナのキャラクターモデル、アニメーション、そしてブキミなサウンドエフェクトを初公開しました。

ちび魔トリスターナ 制作最新情報: 各要素が新たなスキンとしてまとまっていく段階について紹介しました。

スプラッシュアートとクロマ: ちび魔トリスターナのスプラッシュアートとクロマに関するより詳細な続報をお届けしました。

進捗報告最終回: 今読んでいるコレです。最後までご覧いただきありがとうございました!

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