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ちび魔トリスターナ: スプラッシュアートとVFX

デーモンファイア、魂、リサーチ、そして…ティーモ。

ちび魔トリスターナの製作がスタートして数週間。本日はここまでの進捗をお知らせしたいと思います。VFXやスプラッシュアートの進み具合もバッチリお見せしますよ!

もちろん、開発はこの間「スタート」したわけではありません。それ以前にスキン投票を行うチャンピオンを選出し、コンセプトを作っていましたからね。しかしこの期間は皆さんに進捗情報などをお知らせできませんでしたから(ネタバレ厳禁!)、今日は振り返ってそのあたりの舞台裏についても紹介してみたいと思います。

では最初に、投票開始以後に届いた質問に回答していきます。

トリスターナを選んだ理由は?

Chelsea Hughes(Riot aeneia)、インサイトリサーチャー: 皆さんどうも!今日私がお話しするのはスキン開発プロセスの中で一番クールでセクシーな部分…(ヒント:モデル関係です)。

ピンポーン!データです!

スキンチームでインサイトリサーチャーとして働いている私のもとには「次に作るスキンをチームがどう決めているのか」という質問がたくさん届きます。そこで今年の「プレイヤー投票」スキンを選ぶ上で行われた意思決定のいくつかについてデータを紹介してみたいと思います。まず、今年選ばれたのがトリスターナだったのは意外に思われたかもしれません。昨年のイラオイは少数ながら熱心なプレイヤー層を擁するチャンピオンで、スキンも1種類しかリリースされていませんでしたから。しかし今年トリスターナを選んだ「理由」は、実は基本的に去年と変わってはいないのです。

詳しくお話ししてみましょう。トリスターナを投票対象にした一番の理由は「偉大なる科学のため」です!現在トリスターナには基本スキンを含めて10種類のスキンがあります。そして各スキンの購入プレイヤー数と実際の使用頻度データを利用して分析すれば各スキンの「愛され度」が特定できます。つまり「プレイヤー投票」スキンのリリース後、他の全スキンと比較ができるようになるわけです。こうすることで「プレイヤーの皆さんがデザイン選択に協力してくれたスキンの愛され度は他のスキンより高いのか?」という問いに答えが出せるプロセスが踏めるのですが、トリスターナのように(イラオイと比較して)スキン数が多いチャンピオンならば、サンプル数が増え、分析精度も高くなり、「偉大なる科学のため」になる…というわけです。

二番目の理由は、トリスターナのプレイ率が比較的高い水準で安定していることです。プレイ率の高さは「プレイヤー投票」スキンが選択される回数に大きく影響します。たくさんの試合で使われれば、より多くのプレイヤーがスキンを目にすることになりますから。自分が投票に参加したスキンを目にする機会が増えるというのも見逃せない利点でしょう。

最後の理由は、トリスターナが(ニッチなチャンピオンではなく)幅広いチャンピオンであり、多様なプレイヤーが彼女を好んでプレイするという点です。プレイ率からは頻度しか分かりませんが、ニッチvs幅広いチャンピオンという対比ではプレイヤーの絶対数が変わってきます。そして「プレイヤー投票」対象に幅広いチャンピオンを選ぶことは、ゲームプレイ中にスキンの意味や価値を感じてくれるプレイヤーが多くなるということでもあります。

クリエイティブ面での方向性決定

正直に告白すると、私はトリスターナメインではありません。彼女のスキルセットを説明することは一応できますが(早撃ち、ジャンプ、爆弾、吹っ飛ばし)、トリスターナメインであることの基本も理解できていません。そこで数ヶ月前、私たちはSuper Secret Rito Records(超極秘Ritoデータベース)にアクセスしてトリスターナメインのライアターを探し出しました。その後スキンチームのコンセプトアーティストとトリスターナメインを集めたミーティングを開催、デザインコンセプトの立ち上げ環境を固めています。

このミーティングを通じて、チームは「武器とエフェクトをテーマと融合させること」(消防士トリスターナが好例)が重要であることを把握。そして多くのプレイヤーが抱くトリスターナのイメージは「元気のいい凄腕ガンナー」(健康的・ポジティブ・少しだけヤンチャ)であることも理解しました。

個人的に一番の収穫だと思ったのは「そのままの印象で陽気で可愛い感じにするか、そこから意識的に離れてダークでエッジィな雰囲気にするか?」で意見が割れたことでした。ここはかなり固く意見が分かれたので、投票時に発表するコンセプト案ではプレイヤーの皆さんがはっきり「どちら側」なのか選べるようにしました。

トリスターナメインライアターとのミーティング

コンセプト製作

Jesse Li(Trayil)、コンセプトアーティスト: コンセプト製作で一番大変だったのは、プレイヤーに見せる案を3つ思いつくことでした。フォーカスグループ(注:意見を聞くために集められた比較的少数の対象ユーザー群)の意見では、可愛く陽気な感じのスキンを望む人は少数で、大半はもっとエッジィな感じを求めていました。一方でチームとしては派手なVFXと鮮やかな色を取り入れようと決めていたので、アイデアを出すときはこれを強く意識する必要がありました。

下にあるコンセプト模索案では、デザインのどの要素が有効か?既存スキンと似すぎているデザインがないか?などをチェックしていきました。ここでは最終的に「Cyber Pop」を除外しています。「銀河の主砲」との差別化が十分でないこと、そして「銀河の主砲」案のほうが魅力的だと判断したことが理由です。

「ちび魔」は誰もが目を引かれたコンセプトでした。他のスキンとテイストが大きく異なる上に、エッジィ具合も限界突破していたからでしょう。当時はちび魔スキンのスキルエフェクトを虹色の炎にしたら他のスキンの炎や爆発エフェクトと差別化できるかもしれない、という案もありました。「銀河の主砲」を選んだ理由は、これまでのテクノロジー系スキン(「オメガ小隊」や「ロケットガール」)が現実世界の技術水準に近いテイストだったので、銀河スキンならば大きく差別化できると考えたためです。「シュガーラッシュ」は、「龍使い」とは異なる方向性で可愛さを示せると考えて採用しています。

こうして3案が決まった後は、それぞれに十分差別化されているか、既存スキンと似ていないかをもう一度チェックし、ようやく投票スタートとなりました。

現在の進捗:本製作

Janelle Jimenez(Riot Stellari)、プロダクトリード: スキン製作において、コンセプトを決定する権利は通常そのスキンのプロダクトリードとチームにあります。もちろんこのプロジェクトでは、最終決定は皆さんの手により下されましたが!

通常のプロジェクトでは、コンセプトにGoサインが出たらブレインストーミングを開始し、テーマを模索していきます。場合によってはコンセプト完成を待たずに本製作を開始することもありますが、今回のプロジェクトでは投票結果が出るまで待つ必要がありました(実は投票プロセスを挟んだことにより、本スキンの制作期間は数ヶ月ほど長くなっています)。

これが終了したら、続いてはビジョンの具現化です。スキン製作はベルトコンベアー式に進んでいくと思われることがありますが(コンセプトが完成したら次の担当者に渡し、作業が終わったら次の担当者へ…といった感じ)、ライアットではこれを共同作業中心で進めるよう努めています。コンセプト製作段階では誰もがアイデアや知見を出すことができるようにし、開発中は常時チームメンバー全員がフィードバックを提供できる体制作りをしています。こうして方向性が確定したら、次にブルースカイ(なんでもアリ)ミーティングで出たアイデアが現実的に可能かどうかを検証します。

デーモンファイアと魂

Kevin Leroy(Sirhaian)、VFXアーティスト: スキン製作プロジェクトでは、VFXアーティストはキャラクターアーティストと並行して仕事を進めるのが一般的なのですが、私はあえてちょっと先に着手するようにしています。ビジュアルエフェクトは「キャラクターの力の源泉」などを示すことができるので、キャラクターモデルの要素を固める上で役立つことが多いですから。なお、サウンドエフェクトは基本的に少し遅れて入ります。ビジュアルエフェクトが(ほぼ)完成しないとサウンドデザイナーも合わせようがありませんからね。

ビジュアルエフェクト作りは試行錯誤の多い仕事です。最初に作るのは、そのスキンで実現したい内容をざっくりとゲーム内で表現したエフェクト、通称「ファーストパス」です。これは本当にシンプルで、全体的な感覚が作り出せていれば色や形状は数種類でも構いません。細かな調整やディテールはファーストパスの完成後に足していきます。

今回のスキンで最初に取り組んだのは、もちろん「デーモンファイア」な見た目でした。このスキンならではのデーモン感を作るべく赤く恐ろしげな雰囲気、炎を表現する色と形、そして弾け出る火花と暗い煙を足していきます。また、紫色をわずかに差し込み、ルーン風の模様も入れました。

これは個人的な好みなのですが、私はまず全スキル分のビジュアルエフェクをざっくりと作ってアイデア全体の雰囲気を掴み、そのアイデアを作り込んでいくかを判断する手法をとっています。もちろん毎回そうする余裕はありません。一部のチャンピオン、たとえばキラキラしたエフェクトを多数用意する必要があるゾーイや2体分のスキルを持つエリスなどはビジュアルエフェクトがずっと複雑になります(こういった場合は最も象徴的なスキルに注力し、その完成度を可能な限り高めていきます)。トリスターナはビジュアルエフェクト的にはシンプルなチャンピオンなので、今回はほぼ全てのスキルのアイデアを模索した上でファーストパスを作ることができました。以下がそのエフェクトです。

ここで直面した最大の課題は、同じ炎エフェクトを採用した「龍使い」と雰囲気が似すぎてしまうということでした。デーモン風要素を足しただけでは独自性が足りなかったのです。そこでこの案をボツにして新しいデザイン案を試しはじめました。ビジュアルエフェクト製作では作ったものがボツになるのはよくあることです。だからこそシンプルな要素で全体の雰囲気を確認し終えてからディテールや愛を注ぎ込んでいくわけです。以下のGIFをご覧ください。いろいろな要素・色・テクスチャが組み合わされて全体の「雰囲気」が生み出されているのが伝わるでしょうか?

ビジュアルエフェクト作りは感覚によるところが大きい仕事です。色彩理論・専門知識・絵の腕前よりも、全体の雰囲気をまとめる技術とテーマの具現化能力が重要なのです。ビジュアルエフェクトの話では、「キラキラ感」とか「シュンシュン感」のような不思議な表現をよく使います。手で大げさな仕草をして雰囲気を表現するのも日常的にやります。そして効果音を自分の口で付けるのも絶対に欠かせません。VFX製作の非常に重要な工程(リンク先英語動画:日本語版は近日公開予定)ですから(嘘じゃありません、タイミング説明にはすごく有効なんです!)。

2案目の「スピリットファイア」は、魂の存在と苦痛を感じさせる神秘的な青い炎が特徴的で、すでに独自性と面白さを兼ね備えていました。またコンセプト画の髪と似ているため、「力の源泉」の統一感も高くなりました。結果、チームはこのアイデアを気に入り、私はビジュアルエフェクトのファーストパスを全スキル分作成しました。アイデアの骨子は「まばゆい青緑色のコアを中心に激しく燃える青い炎」と「わずかに熱を抑える紫色の差し色」。ここに細かな飛沫がはじけ飛ぶエフェクトを加え、幽霊・エクトプラズム的な印象を追加しました。

この案にはチーム一同ワクワクしてきています。トリスターナは元々オレンジ/赤色の炎っぽいエフェクトを使ったスキンが複数あるので、今回のスタイルは独自性・差別化の面でハマっているのではないでしょうか。以下に示すのは、現在試している「魂を力の源泉とする」というアイデアの実験案の一部です。現在の3Dモデルは他のスキンのパーツやシンプルな形状を組み合わせて作った仮バージョンで、デザインは今後変更になる可能性もあるわけですが…どうでしょう?

ちび魔のイラストを描く

Jennifer Wuestling、イラストレーター: スプラッシュアートを描く時は、そのチャンピオンを象徴する瞬間、そして最も鮮烈な瞬間を探し続けます。スプラッシュアートは、見た人の想像力を刺激し、ファンタジー世界にある「その瞬間」へ誘うものでなくてはいけませんから。

私の場合、スケッチを始める前にはリサーチを行って役立ちそうな情報や資料を集めます。スプラッシュアートとストーリー要素は相性抜群なので、まずトリスターナの物語を読み込み、他のチャンピオンとの関係性、過去のスプラッシュアートではどんな瞬間やスキルが描かれているか、なども確認しました。

またフィードバックをもらう相手として、過去に似たテーマや同じユニバースのスプラッシュアートを担当したアーティストも探しました。そして当然ながらトリスターナもたくさんプレイしました。アニメーションやセリフ、スキルの使用感に気を配りながら。チャンピオンを使っていて一番ワクワクする瞬間を体感するのは、最高のインスピレーションになります。私の場合、特に印象に残ったのは陽気な歩き方と興味深そうに周囲を見回すしぐさ、そして彼女自身と大きな銃のミスマッチの可愛さでした。

その後はスプラッシュアートのブレインストーミングで出たアイデアを元にスケッチを描いていきます。最初のスケッチはかなりざっくりと描きます。これはウォーミングアップでもあり、チャンピオンをビジュアル的により深く理解していく手段です。ここで描きながらどんなポーズがハマるのか、どこにストーリーを組み込めるかを確かめていきます。

次のステップではスケッチを少しクリーンアップしてチームに見せ、私とチームの見ている方向性が揃っていることを確認します。

続いてチームが気に入ったサムネイルを選び、私がそのスケッチにさらに書き込みを加え、ディテールや陰影を足してシーンの印象を固めていきます。

…さて、これが現在の状態です。チームのお気に入りは2番と9番ですが、あなたのお気に入りは何番ですか?ぜひコメントで教えてくださいね!

それではまた次回

以上、おそらく今回のプロジェクト最大のボリュームでお届けした進捗情報でした。次回は「劫火を操る地獄のヨードル」をゲームに組み込む方法に関する情報や、キャラクターモデルやリギングの進捗についてお知らせします(うまくいけばサウンドデザインについてもお話しできるかもしれません)。

それではまた2週間後、NEXUSでお会いしましょう!

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