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ちび魔トリスターナ: モデルとサウンドエフェクト

2回目の進捗報告となる今回は、スカルプティング、唸り声、ソウル、それから実際に動くトリスターナの動画をお届けします!

ちび魔トリスターナの本制作が始まってからおよそ4週間が経過。前回の進捗報告では、今回「ちび魔」を選んだ理由、VFXの模索プロセス、そしてスプラッシュアートの草案を皆さんにお届けしました。

実は前回紹介した内容と並行して他のチームメンバーも開発を進めていたのですが、スキン開発についての記事を数万文字の特大ボリュームでお送りするのは(少なくとも1本の記事として出すのは)ダメだろうという判断で一旦あそこで区切っていました。そこで第2回の今回は、キャラクターモデル製作、リギング、アニメーション、VFX、そしてサウンドエフェクトについてお話ししてみたいと思います。

ちび魔の彫刻

EdBighead245(Trevor Carr)、シニアキャラクターアーティスト: チャンピオンやスキンの「モデル」というのは、基本的にゲーム内で表示されるキャラクターのことです。これは無数のポリゴンで作った「かたち」にテクスチャーを貼って作られています。キャラクターモデルはデジタル彫刻(英語ではスカルプト)のようなものを、いろんな技術を組み合わせてゲームエンジン上で動くようにしたもの、とも言えるでしょう。

一般的な開発体制では、キャラクターモデルの制作工程はコンセプトアートが完成してからスタートします。しかしLoLの場合は通常、コンセプトが完成する前から作業を開始してコンセプト固めを支援していきます。この段階ではまず既存のキャラクターモデルの部品をつなぎ合わせ、コンセプトがゲーム内でどんな風に見えるか「仮組み」してテストします。これは2Dの画像を3D化するにあたって、めりこみ(キャラクターの一部が他の箇所にめりこんでしまう状態)や見下ろし型のゲーム画面でビジュアル上の問題が生じないことを検証する作業です。

ライアットではこの寄せ集めモデルのことをプロキシ(代用、Proxy)と呼んでいます。ちび魔トリスターナのプロキシでは基本スキンの顔、デーモンヴァイの角と髪、オメガ小隊スキンの体と銃、そしてちび悪魔ティーモの羽としっぽをつなぎ合わせました。

検証の結果、コンセプトに問題がないと確認できたら楽しいモデリングのスタートです!まずはZbrushなどのプログラムを使って主要なパーツの形状を作り、3Dコンセプトを制作。デザインの「核となる部分」をどの角度からも見られる状態にします。

実はこの工程、実際の彫刻とかなり似ています。スカルプティングプログラムは何百万ものポリゴンを使って表面の形状をシミュレートするので、見た目としては粘土彫刻のようになるわけです。ここまでできたら、コンセプトアーティストに「このざっくり描いてある小さなパーツ、結局何のためにあるわけ?」とツッコミを入れていきます。今回の場合だと、以前のコンセプトアートでは手で隠れていたトゲトゲ付きベルトなどですね。

また、衣装についてはアートでは完全に描き切られていない部分もあるので、そういった部分はスプラッシュアート草案やデーモンヴァイ(選んだ理由?カッコいいからですよ!)からアイデアを流用したり、独自に作ったりします。最終的にチームが「ちび魔の核となる部分が忠実に再現された」と感じるレベルに達したら、次の工程に進みます。

ちび魔トリスターナのハイポリスカルプト完成版

こうして作られるモデルのスカルプトですが、そのままだとLoLゲームエンジン上で動かすにはポリゴン数が多すぎます。そこで最適化を施してゲーム内で使用するメッシュ(ポリゴンの集合体)を作成します。モデルを「リトポ」(リトポロジの略、メッシュを再構成すること)する時、ライアットでは元となるスカルプトの上にメッシュを再構築します。作られた新しいメッシュは「ローポリ」モデルとしてゲームに組み込まれ、実際にゲーム内で表示されます。LoLのローポリメッシュはだいたい7,000~10,000個の三角形で作られています。要するにこの工程は3D空間でトレース(透写)するように、ハイポリスカルプトの上にローポリメッシュを描く作業です。

なおメッシュ製作時にはキャラクターのシルエットをしっかり考慮する必要があります。湾曲したエッジ部分がゲーム上で滑らかに表示されるようにするにはそれなりのポリゴン数が必要ですが、グラフィック性能の限られたPCがレンダリング時に息絶えるほど大量には使えません。LoLのゲームエンジンは(そしてあなたのグラフィックカードも)メッシュに含まれるすべての頂点を、リアルタイムに毎フレーム計算するわけですからね!それからアニメーションへの配慮も重要です。関節部分に十分なポリゴン数を割いておかないと綺麗に曲げることができませんし、最悪の場合アニメーションが破綻してしまいますから。

現在はテクスチャ作業中なので、これ以降のキャラクターモデリング工程については次回の進捗報告をお楽しみに!ひとまず今回はこの記事の下にある動画をお楽しみください。

ボーン、ジョイント、しっぽ

ANDMoonY(Moonyoung Oh)、テクニカルアーティスト: チャンピオンやスキンのモデルは最初、動かない人形のような状態です。今回私が担当したのは、ちび魔トリスターナの動かないモデルを生き生きと暴れまわるデーモンヨードルに進化させる下準備でした。この工程は「リギング」と呼ばれるもので、ボーン、ジョイント、コントロールを配置してアニメーターがさまざまな動きを作れるようにします。

リギングはコンポーネントを組み合わせて行います。このコンポーネントとはキャラクターを動かす上でよく使われるジョイントやコントロールのコードを含む設計図のようなものです。また、リギングにおけるコンポーネントは体の各部位にあたり、腕、足、背骨、羽などが存在します。私たちテクニカルアーティストは既存のコンポーネントを使ってチャンピオンやスキンのリグを組んでいきます。端的にまとめると、人間がプログラムに「腕はここ、頭はここ、背骨はここ」と伝え、プログラムが各部位向けに用意されたスクリプトを使って新しいリグを作る、という感じの作業です。

リグに新要素が含まれる場合は、新たに対応コンポーネントを作る必要があります。私がちび悪魔ティーモのしっぽを作った時などがまさにこれです(なにせ私はちび悪魔ティーモの父親ですからね…)。トリスターナの場合はティーモ用しっぽコンポーネントを使えたので、すぐにしっぽとケープにアニメーションを付けられるようになりました。ただそのままではしっぽの動きがパタパタしていたので、より柔らかで自然な見た目になるようツールを使って調節しています。

トリスターナに命を吹き込む

Riot Beinhar(Einar Langfjord)、アソシエイトアニメーター: スキンのアニメーターには、キャラクターの動きを作り、その性格を表現する責任があります。キャラクターアニメーションで特に重要になるのが、動作の明確さと操作感の気持ち良さの2点です。たとえばエピックスキンの中でも特に目を引く要素であるリコールアニメーション。これはストーリー性を出してスキンの特別感を表現する絶好のチャンスでもあります。ただリコールアニメーションにはまだ着手できていないので、こちらについては次回以降でお話しすることにします!

こういった目立つ要素以外でも、アニメーターは「プレイ感覚を大きく変えない」という大原則を守りつつ、アニメーションでキャラクターの個性を表現できる場所がないか探し続けます。ちび魔トリスターナの場合もいくつかそういう場所を見つけることができました。今回は炎のような髪、ロケットジャンプ用の独自アニメーション、そしてしっぽの細かな動きにこだわっています。

通常のロケットジャンプ、エリアルガンダンク、デアデビルダイブボム

今回、Wのアニメーションでは羽を活かしたいと考えていました。せっかく不気味なコウモリの羽があるのに使わないないなんてありえませんからね。そこでまず「トリスターナならどう着地するか?」と考えていきました。ジャンプの勢いを活かして着地時に銃でスラムダンクを決める?あるいはまず危険地帯に飛び込んで、賢明な判断だったかどうかは着地してから考える?などなど。

最終的に、チームは「これが一番ちび魔トリスターナの性格を表している」という理由で砲弾のように飛び込んでいくアイデアを採用しました(これは「ソロキューヒーローモード」の精神をこっそりと体現するアイデアでもあります)。

次に注目したのが髪のアニメーションです。そう、あの髪です!ワクワクしてくるでしょう!?自分でハードルを上げているような気もしますが、髪がデーモンファイアでできていたら最高ですよね。でも炎の髪と普通の(退屈な)髪の動きは具体的にどう違うでしょう?それを知るには炎についてリサーチする必要がありました。炎はとてもしなやかでアグレッシブに動きます。暖炉の火ですらワイルドで刺激的になりえるほどですから。

ただ、こういうタイプの炎には「ゲームの邪魔になりうる」という問題がつきまといます。ただですらゲーム内は派手な要素が多く、それらがプレイヤーの注意を引こうとせめぎ合っている状態ですから。戦場で起きていることよりもトリスターナのメラメラしたヘアスタイルに目が行ってしまっては困るので、アニメーションは当初より大幅に抑えたものにしました。活き活きとした印象を保ちつつもプレイヤーの目を引きすぎないというゴールを考え続け、最終的にはロウソクの火を意識したアニメーションとしています。こうしてでき上がったのが以下のビジュアルです。

唸り声と獄炎の歌

semipriceysoap(Alison Ho)、サウンドデザイナー: こんにちは!ちび魔トリスターナスキンのサウンドデザイナー、semipriceysoapです。今回のちび魔コンセプトでは「銃が炎を吐く生物」ですが、これは龍使いトリスターナと同じであるため、サウンド的観点からどう料理するかはなかなかの難問でした。しかしSirhaianが作った青い炎のVFXとちび魔トリスターナ発表後に皆さんから寄せられたリアクションを見たところ、どうやら多くの人はよりハードコアでアグレッシブなトリスターナを求めていることが分かりました。龍使いトリスターナでは幼いドラゴン「リグル」の可愛らしさに寄せていたので、今回は「炎」にこだわらずダークで不気味な方向性を模索することにしています。

まずはちび悪魔ティーモや他のプロジェクトで収録した唸り声や呼吸音をお聞きください。

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ここにサウンドライブラリから持ってきた炎のサウンドと動物の鳴き声を組み合わせ、加工するとこうなります。

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ちび魔トリスターナスキンのスキルセット用サウンドは、こんな調子で不気味なサウンドをいくつも使って製作中です。下にある動画では現在制作中のサウンドエフェクト、そしてセリフ音声に適用したエフェクト(こちらについてはまた後日!)もチェックできますのでぜひ見てみてください。

セルリアン色のソウル

Sirhaian(Kevin Leroy)、VFXアーティスト: どうも!トリスターナのVFXについての続報です。まだ開発中ではありますが、あれから微調整を重ねて「スピリットファイア」という方向性がかなり納得のいくレベルにまででき上がってきたので、このまま最後まで作り込んでいくことにしました。最近の進捗としては「魂」のエフェクトを増やし、ティーモの爆発エフェクトをより判別しやすい「視覚的にうるさくない」エフェクト(ソウルオーブ)で置き換えています。それからスキルセット全体の色調整も開始し、通常攻撃、クリティカル、Q、E、Rがそれぞれ判別できるように調整を重ねています。あとはWのジャンプ時には羽に新VFX、Rにはルーンを追加し、全体のディテール作り込みも進行中です。

以下は現時点でのゲーム環境におけるちび魔トリスターナのプレビューです。

今後はしっかりと完成まで作り込みを続け、リコールのVFXを作っていく予定です。

次のステップは

このスキンの開発についてはずいぶん色々と紹介できたと思いますが(ほっと一息…)、まだまだ完成ではありません。ここからリコールを作り、サウンドデザインやスプラッシュアートを完成させ、さらにQA・ローカライズ・パブリッシング関連作業・PBEリリース・ローンチ後の調査といったスキンリリース関連作業も進めていく必要があります。次回の進捗報告ではSFXとセリフ音声のエフェクト、そしてアニメーションとキャラクターモデルの最新情報を紹介する予定です。

では記事を締めくくる前にひとつ…前回の進捗報告でお見せしたスプラッシュアートのサムネイルのこと、覚えていますか?反響を見る限り、「地獄の玉座でくつろぐちっこくてエッジィなトリス」が圧倒的一番人気でした。そこでこのスキンのスプラッシュアートはこちらのデザインで進めていきたいと思います。ご意見をお寄せいただいた皆さん、ありがとうございました!皆さんの声は開発終了の瞬間までしっかりと耳を傾けていきますので、今後もどうぞよろしくお願いします!

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