Ask Riot

LoLやRiotに関する質問をお送りください。回答は日本時間の隔週金曜日に掲載されます。

質問を入力してください

エラーが発生しました。再度お試しください

ご質問ありがとうございました!

次の記事

/dev:型破りな楽器と新たな楽譜

「Pentakill II」その他の楽譜。型破りな楽器を使った音楽制作の舞台裏。

Scherzoによる

皆さんこんにちは。ライアット ミュージックチームのAlex “Scherzo” Templeです。今日はリーグ・オブ・レジェンドの楽譜第二弾と、それから「偶然見出された楽器」、“ファウンド・インストルメント”を使った音楽制作の試みについて詳しくお話しします(少し説明しておくと、美術の世界では偶然見出されたオブジェクトをファウンド・オブジェクトといいますが、楽器の場合はファウンド・インストルメントと呼ばれます)。

私たち作曲家が使う楽譜というものには型どおりの音楽が記されているものですが、“ファウンド・インストルメント”を使うことが何を意味するかというと、それはつまり「型にはまらない音楽」を意味します。ありふれた日常品を楽器として用いたり、本来の奏法とは大きく異なるやり方で楽器を演奏するのですから。作曲家として私たちは、ライアットのサウンドデザイナーたちの身近にいて互いに情報を共有し合える幸運な境遇にあります。サウンドデザイナー陣は、普通の人が見れば驚くようなオブジェクトや素材を使って素材となる音源を録音します。ファウンド・オブジェクトを楽器として利用する作曲家やミュージシャンはたくさんいますが、「思いもよらない音素材を見つけたい」…私たち作曲家をそんな気にさせている原因は、LoLのサウンドデザイナーたちのこうした音声の収集作業にたびたび触れていることにあると思います。

ゾウンのドラム

すでに私たちは数百におよぶ楽器のプリセットバーチャルサウンドを持っているわけですし、ロサンゼルス在住の著名なミュージシャンに助力をお願いすることもできます。それなのになぜ苦労して楽器でもないものを楽器として使ったり、想定外の方法で楽器を演奏しよういうのでしょうか?わかりませんよね。

これがなぜ必要かというと、既存の楽器と同様の役割をこなしながらも、異なるサウンドを奏でる楽器や素材が必要になることがあるためなのです。私たちはLoLのために、二つの目的を同時にカバーする音楽を作曲しなくてはならないことがしばしばあります。一つ目は、キャラクターやシナリオについて音と映像で説明する、広義の意味での“コメンタリー”を提供すること。もう一つは、ルーンテラ独自の(あるいは扱っているキャラクターや陣営、シナリオ独自の)ものとして想定される、楽器や質感、ハーモニー、メロディーの、通常とは違う特殊な使用方法を示すことです。特定の地域の楽器がどのようなものかについて考えるとき、まず次のような“仮定的な”命題を立てます——「この楽曲では典型的なオーケストラ楽器は使いたくない。[ルーンテラの陣営名]では、[楽器名]はどんな音になるんだろう?」

例として、私たちがエコーのチャンピオンティーザーで使ったドラムを見てみましょう。エコーの音楽を制作し始めたとき、私たちはゾウンに存在するドラムの音や、ドラムに“相当する”楽器がどんなものになるのかを考えてみました。そして、音楽好きなゾウンの住民は創造性や才覚には富んでいるだろうが、いい音がする楽器はまず手に入らないだろうと考えました。彼らは拾い集めてきたガラクタで作った楽器や、楽器以外のモノを楽器代わりに使うことで、自分たちの音楽の才能を表現するはずです。

そんなわけで私たちは通りの向かいのホームセンターまで実地調査に出かけました。さまざまな金属やプラスチックを叩きながら面白い共鳴特性を持つ物がないか探して回る我々の姿が店員の目にどう映ったのか、それは知る由もありません。店を出たとき、私たちはパーカッションキットの材料となる75リットルの鉄製ゴミバケツと銅線一巻き、金属製のバネ、タイヤ用レンチ、コートハンガーを抱えていました。ゴミバケツにドリルでいくつか穴を開けて、銅線を通し、ガラガラ音を立てる取っ手を取り除くと、爪弾いたり、弓で弾いたり、叩いたり、落としたりすることで、漠然と音階を持ち、さまざまな変わった打楽器風の音が鳴る楽器が完成しました。

針金とゴミバケツから造った奇妙な楽器

上に書いたような叩いたりといった動作をすべて録音して、録音したものを個々のサウンドに切り分け、MIDIキーボードで再生できるようにしました。こうしてゴミバケツが実際の楽器に変わり、市販のサンプリングライブラリと同様にプロジェクト内で使用できるようになったわけです。

こちらはエコーのティーザー、“Seconds”の中でゴミバケツ楽器のサンプリングを使って演奏された打楽器のフレーズが聞ける部分を抜粋したものです。よく聞こえるように、他の楽器に比べて音を大きくしてあります。

00:00

同じ部分からゴミバケツ楽器のサンプリングのみを抜き出したものがこちらです。

00:00

少々残念なことに、ゴミバケツの打楽器は私たちがドラムに求めていた、腹にくるようなパンチに欠けていたので、最終的には私たちが作成した「ファウンド・パーカッション」そのものではなく、ライブラリ内にあった既製品のドラムサンプリングと組み合わされた“ハイブリッド”キットが使用されることになりました。それでも、私たちが作った楽器の特徴的な音は十分な存在感を発揮しています。

モリノトモダチ

「普通とは違うサウンドが必要になる」理由は他にもあります。何となく聞き覚えのある音ではあるものの、普段その楽器を耳にする状況とは異なる音楽的なコンテクストでその音を再利用したいような場合です。

たとえば、アンビエント・パッドは基本的には長音で、通常はアタックとリリースが遅く、始まりと終わりに明確に定義された音階がなく、ゆっくりとフェードインしてフェードアウトしていく印象を与えます。リズム的な明瞭さがないことから、メロディーを明確にせずに音楽的な情報を伝えるムードを作り出す場合に非常に効果的です。さらに、ハーモニーのサポートや、背景の質感を豊かにする目的にも利用できます。

アイバーンのチャンピオンティーザーのために作ったアンビエント・パッドを見てみましょう。私は平和的で“モリ”のものだと感じられるパッド・サウンドを求めていましたが、シンセ風のサウンドにはしたくないと考えていました。シンセ・パッドは響きがクリーン過ぎることが多いので、音楽的には同じような機能を果たしながらも、現実世界の音源から聞こえてくるような、不完全で“揺らぎ”を感じられるような音が欲しいと考えていました。「そういえば同僚の作曲家が、インドネシアを旅行した友人がプレゼントしてくれた『アンクルン』を自分の部屋に飾っていたはずだ」。アンクルンは竹をくり抜いた管を木の枠に吊り下げて作った木製の楽器で、片手で枠を握り、もう片方の手で管をそっと揺らして演奏します。

アンクルン

私はこの木の楽器ならではの音が好きで、この音ならキャラクターのテーマにも合っていると考えましたが、しかるべきテクニックを身に付けなければこの楽器の音を鳴らすのは難しく、演奏していない管がぶつかってカタカタと音が聞こえてしまいました。しかし、複数の管の音を個別に録音したものをレイヤーにして重ね合わせ、一部レイヤーのオーディオを引き延ばして、全体に深いリバーブをかけて再生すると、元の録音にあった管のぶつかる音が消えて、音の芯が伸びるような効果に変わることが分かりました。この方法によって、求めていたこの楽器の特徴をほぼ保ちつつ、ミュージカル・パッドとして十分に利用することができるサウンドが出来上がりました。

こちらが曲の中で加工処理を施したアンクルンの音が使われている部分です。エコーのときと同じように、実際のミックスよりも楽器の音量を少し上げて聞こえやすくしています。

00:00

こちらは未処理のアンクルンの音源だけを再生したものです。

00:00

市販のアンクルンのバーチャルサウンドではこの効果は得られなかったと思います。既製の音源は丁寧に録音されているがゆえに、あまりにも正確過ぎるのです。

ファウンド・インストルメントを使用すると、往々にして最終的に出来上がるものは、最初に設定した「仮定的な命題」と「当たり前のアプローチ」の中間に落ち着きます。時には、「こう聴こえるはずだ」という仮定の部分を完全に実現させると、あまりにも調子外れに感じられて、リスナーを引き付けられる耳慣れた要素が欠けていたり、単純にいい音に聞こえないこともあります。それでも、初めから標準的な楽器を使って、最後に“味付け”の楽器を加えるよりは、この方法の方がよりテーマに特化した結果が得られると実感しています。当初仮定されたコンセプトが実験的過ぎると感じられるような場合には、エコーのドラムキットのようにもう少し一般的なものに戻せば大きな効果があり、私たちが用意した特殊な楽器が、楽曲に独特の味を加えられるような良いバランスを見つけることができるのです。

***

解説はこんなところにしておきましょう。それでは、こちらの楽譜をお楽しみください!Ed the Conquerorが最初の楽譜をリリースしたときに説明していたように、これはレコーディングセッションで使った楽譜そのままなので、メモや書き込みや間違い、最終的に削られたり変更されたりしたアイデアなどが含まれている可能性があります。

ルルとシャコ

ルルとシャコ

レコーディングは楽しいものでした。私たちは弦楽器と吹奏楽器を同時に収録して、その後、同じ日に管楽器を個別に録音しました。通常、このような“ストライプ(縦縞)”と呼ばれる並行セッションを行うときに最善の方法は、事前に一定のテンポのテンポ・マップを作成しておき、それによって生成されたクリック音に合わせてミュージシャンが演奏するというものです。こうしておけば、別々に録音したアンサンブルを組み合わせたときに、すべてが綺麗に揃います。

しかし、ルルとシャコに関しては、私たちはこの最善の方法を無視して、クリック・トラックを使わずに、弦楽器と吹奏楽器を“ワイルド”(クリック音を使わず)で録音することで、ミュージシャンと指揮者に自分たちが楽曲にふさわしいと思うテンポを試す余地を与えました。これが最初のセッションで非常に上手くいったので、誰かが冗談半分に両方のセッションをクリック音なしのワイルドでレコーディングしようと提案しました。このアプローチはキャラクターには合っているかもしれませんが、二つのワイルドで行ったレコーディングを組み合わせて編集する担当者には、悪夢のような困難な作業が待っています。アニメーションにたとえると、二体のキャラクターが剣で戦うアニメーションを作る際に、二体のキャラクターの位置やタイミングがまったく分からないままにそれぞれのアニメーションを別々に作成するようなものです。それらを組み合わせたときに、間違って互いを刺し違えることがないように祈るしかありません(あまり、いい例えではありませんでしたね…)。

幸いなことに冷静に対策を考えて、セッション間の短い休憩の間に必死になって手動で一拍ずつクリック・トラックを作成し、次にやってくる管楽器演奏家たちが弦楽器と吹奏楽器のレコーディングに合わせて演奏するための指標となるものが出来上がりました。

-Scherzo

エレメンタリスト ラックス

エレメンタリスト ラックス

トランスフォーメーションはクリエイティブな人たちの間で人気のテーマなので、それをLoLのスキンで行えることが非常に楽しみでした。私が考えたアイデアは、よく知られたテーマを持つ要素を使って、三つの形態(光、火、水)の間を自由に行き来するというものでした。私たちはWarner BrothersのEastwood Scoring Stage(世界一好きな場所の一つです!)で弦楽器と合唱団を別々に録音しました。今にして思えば、これは私の作曲活動の中でも特に“エモーション”に依る部分が大きく、感情全開で挑んだ楽曲だったと思います。

合唱団のセクションはアルト6人とソプラノ6人の12人の歌手で構成されています。たったこれだけの人数でこんなに大きなサウンドが出せるのは驚きです。

オーケストラの背後に聴こえるシンセのタペストリーも同じくらい楽しみました。弦楽器、管楽器、合唱団を取り除くと、80年代音楽風のテイストがたくさん現れてきます。いつかこれらの一部を披露できることがあればいいですね!

-Ed the Conqueror

レジェンダリーバーサス:ヤスオVSリヴェン

レジェンダリーバーサス:ヤスオVSリヴェン

開発チームと話をして初期のスプラッシュアートを見せてもらい、そこからインスピレーションを受けて、このレジェンダリーバーサスの楽曲では次の二つの目標を実現したいと考えました。1)二人の戦士が互いににらみ合う、「嵐の前の静けさ」的な危険な瞬間を表現する。2)両者にシンプルな共通するモチーフを持たせて、それを曲の展開に合わせて進化させていく。ただし、それぞれのチャンピオンに合わせて異なる楽器を利用する。

ヤスオのログイン画面では尺八が使われています。ミュージックチームと試行錯誤した結果、フレーズの最後に自動でディストーションがかかるリバーブをかけると、混沌の闇ヤスオのテーマにふさわしい、ダークで歪んだサウンドになることが分かりました。秩序の光リヴェンについてはアコースティック・チェロの暖かさと力強さが彼女を表現しており、最初は控えめに始まりますが、徐々に制約から解放され、時間が経つとともにどんどん情熱的になっていきます。

曲の最初に聞ける短いモチーフ(ソ、ラ、下降してレ)は、楽曲の最初にリヴェンとヤスオそれぞれの楽器で演奏されていますが、そのあとに続くメロディー(および各セクションの和音)は両者で大きく異なっています。そこから曲が変化していき、お互いのフレーズを演奏し合うようになり、最後には一つに合わさります。

この曲は各ソリストの素晴らしいパフォーマンスがあってこそのものなので、この場を借りてRachel(尺八)とJeness(チェロ)に心から感謝の意を表明したいと思います!

-Talondor

Pentakill II: Mortal Reminder

Pentakill II: Mortal Reminder

この曲は私がオーケストラのアレンジを加えたときには、すでにかなりの部分が完成していました。始めてすぐに、私は“メタル”にオーケストラを追加することの難しさに気付きました。オーケストラが出しゃばり過ぎるとギターの存在感が薄くなり、そのパワーが奪われてしまいますが、逆に控えめにすると貧弱に感じてしまうので、そのバランスを取る必要があります。これはミキシングとオーケストレーションの両面で難しい挑戦となりました。初期の“オーケストラがやり過ぎた”バージョンでは、曲のほぼ最初から最後までオーケストラが演奏されていて、ときどき味付けにハーモニーが追加されるというものでした。悪くはなかったものの、オーケストラ無しのバージョンの生な感じがまるでありませんでした。曲が大きく盛り上がる部分のためにオーケストラを取っておくことで、単純にそこにあるから使うというよりも効果的な使い方ができたと思います。

楽譜には弦楽器、管楽器、合唱が含まれていますが、実際に生でレコーディングできたのは弦楽器のみでした。「ルインドキング・ブレード」のレコーディングセッションと同時の作業だったので、あの大作に管楽器と合唱団のほとんどの時間を取られてしまったからです。

-Scherzo

次の記事

/dev: マッチメイキング改善の取り組み