今週はセナ、ユーザー名、そして哲学における実存的不安という概念について(ん?)の特集です。さあ始めましょう!
Riotアカウントはどうしちゃったの?なんでLoLにログインするときのユーザー名を変えなくちゃいけないの?
これは短くまとめると、新タイトルのローンチに備えてアカウントシステムをアップデートする必要があったためです。このアップデートが完了すると、世界規模で固有でない(=別の地域でも使われている)ログイン名が存在すると問題が生じてしまうため、重複する名前を使っているプレイヤーの皆さんに変更をお願いすることとなりました。なお、変更されるのはログイン時のユーザー名のみで、サモナー名を変える必要はありません。
詳細に説明すると、新タイトルのローンチ準備に際して、私たちはアカウントシステムを再構築する必要に迫られました。旧システムにおけるアカウントは特定地域と紐付けられていたため、『リーグ・オブ・レジェンド』の地域区分と新規タイトルの地域区分が完全に一致していない限り、新規タイトルをリリースできませんでした。今後リリース予定のタイトルでは、地域区分の構成がLoLとは異なるものになる可能性があるため、ここが問題となったのです。
この問題を解決するには世界中の各プレイヤーのユーザー名が重複しない状態(ユーザー名が固有の状態)を作る必要がありますが、現在はサーバー間でユーザー名が大量に重複しています。そして新ユーザー名システム導入時に同一ユーザー名のユーザーが存在すると、どちらのユーザーもログインできない状態が生じてしまいます。別の方法も模索したのですが、複数タイトル向けプラットフォームを構築する上で、今回の施策以上に信頼性・安全性・持続可能性の高い案が見つかりませんでした。
移行に際して皆さんにかかるお手間や不都合をもっと抑えられればよかったのですが…。プレイヤーとしてのアイデンティティーの一部を変えなければならないのですから、それは当然好ましくありません。たとえそれが他者に見えないものであったとしても。現在はプレイヤーの皆さんにログイン方法の変更をお願いしている(新ユーザー名システム導入の準備)段階ですが、導入後は新タイトルをスムーズにプレイできる環境を提供してまいります。本プロセスが皆さんにとって不本意なものであったことは承知していますが、正直に申し上げて私たちとしてもこれは不本意な結果です。新システムにおいては今後このような事が起きないよう将来性を最大限に考慮していきます。
一方では、ユーザー名とパスワードを保存して自動ログインする新機能は多少の利便性を提供できるものと思います。この他、皆さんからの要望が多かった「ユーザー名ではなくメールアドレスを用いたログイン」機能についても検討を進めているところです。また変更後のユーザー名に満足していない方に向けて、来年の初旬にログイン情報を変更できる機会を設ける予定です。
取得時期が早かったアカウント(あるいは先にログインしたアカウント)を自動的に維持するという方法もあったのでは?
この案は私たちも検討したのですが、複数の問題を引き起こす可能性があったため採用しませんでした。
たとえば、あなたのユーザー名が他のプレイヤーと重複しているとして、あなたのほうが先にアカウントを取得していたとします。その状態で新ユーザー名システムを導入すると、ログインシステム側では対象ユーザー名を使ってどのアカウントにアクセスしようとしているのか(先にアカウントを取得したあなたなのか、別のプレイヤーなのか)を判断することができません。
これを回避する唯一の方法は、あなた以外のアカウントを変更することですが、この方法だと「対象となったプレイヤーのアカウントを永久的にロックしてしまう」リスクが生じます。たとえば、あなたのユーザー名が変更されたとします。ユーザー名が変わったとは知らずにいつも使っていたユーザー名でログインしようとしても、ログインシステムは別のアカウントへのアクセス試行だと判断するようになっているため「パスワードが間違っています」というメッセージを繰り返すばかり。さらにこの状態になったときにアカウントに紐付けたメールアドレスが無効化されていた場合は、あなたは新しいユーザー名を知る手段が無くなってしまうのです(そもそもこの場合、ユーザー名が変更された通知も受け取ることができません)。
セナの開発中、サポートとして優秀な状態とADCとして強すぎない状態のバランスはどうやって取ったの?
セナの開発中はサポートとしてもADCとしてもプレイ可能にするというのが一貫した目標でした。これを実現するため、開発チームは彼女のキット(スキルセット)にポジション固有の調整項目をいくつか設けています。最初に調整するのが、「霧を集める」という固有スキルの部分です。セナのキットはほぼすべてが霧のスタック数に影響されるようになっているため、ポジションに応じて霧の出現頻度を増減させることで対象ポジションにおける彼女の有用性を調整できるようにしています。セナ自身がキルしたミニオンから霧が出現しにくいのはそのためです(サポートよりもゴールドやアイテムを入手しやすいADCポジションでは霧のスタック数が少なくても活躍することができるため)。今後はADCポジションで強すぎる状態なら砲台ミニオンから霧がドロップする確率を下げたり、サポートポジションで弱すぎる状態なら自身がキルしなかったミニオンから霧がドロップする確率を上げたりといった調整も検討することになるでしょう。
固有スキル以外では、アイテム性能の反映率でも調整を行えます。サポートセナは魔力系ビルドに行くため、魔力の反映率をバフ(強化)することでADCセナへの影響を抑えながらサポートセナをバフできます。一方でADCセナはインフィニティ・エッジなどの強力な攻撃アイテムを購入するためのゴールド稼ぎが容易なので、キャリーとしての性能を調整する際にはクリティカルダメージの反映が有効な変更ポイントになります。
大前提として、セナのADCとしての強さとサポートとしての強さは近い状態にしたいと考えていますが、両ポジションでの勝率が同一である必要はないとも考えています。理想はどちらのポジションでも「有効なピック選択肢」と感じられる状態です。そうなれば、一方を大幅に弱体化(ナーフ)する必要もありませんから。なお、これだけ準備を整えてきたのでどちらのプレイスタイルでも有効な状態を維持していけるだろうと個人的に楽観視していますが、もしもそれが叶わないときには、ADCよりもサポートとしてのセナを優先します。
どうしてマークスマンを2体連続でリリースすることにしたの?
普段から年間スケジュールを立てる際には、テーマ、クラス、ポジション、キット(スキルセット)の複雑性/難易度、雰囲気、地域、性別などを考慮して多様なチャンピオンをお届けできるように努めています。これらのバランスを考慮する際には、新チャンピオンだけでなくVGU(ビジュアル・ゲームプレイ・アップデート)も含めて考えます。たとえば新ジャングラーがリリースされないのは、直近のVGU対象にジャングラーが多かったことも理由の一つです。
ではなぜ私たちは、セナとアフェリオスを立て続けにリリースしたのでしょう?これにお答えするには少し時間を遡る必要があります。実はアフェリオスの初期コンセプト模索プロセスに着手したのは、セナに取り掛かるよりも前のことでした。そしてアフェリオスは複雑なチャンピオンだったのでキットの方向性決定までにかなり長い時間がかかった上、キットの複雑さゆえにプロダクション期間も平均以上の長さになりました。そんな中、アフェリオスの開発中にLoLの10周年用のチャンピオン案を考える時期が来て、私たちは「長年遊んできた人ほどワクワクする」チャンピオンこそがふさわしいだろうと考えました。
その後ブレインストーミングを重ねていき、ルシアンとスレッシュをリリース時から見てきたプレイヤーの皆さんにとってセナをランタンから出したらインパクトと懐かしさを両立できるだろうと判断しました。そして、この時はもう「チャンピオンのリリーススケジュール上正しいかどうか」よりも「セナをどう作るのが正しいか」という状態にありました。その後すぐにセナはマークスマンとすることが決まります(これまでの物語でも常にそう描かれてきましたから)。また、ルシアンと共にレーンに出られることが重要だと考え、彼女のロール(役割)はサポートマークスマンに決まりました。今年はもう新サポートとしてユーミをリリースしていて、年末に向けてリリース予定の新チャンピオンがアフェリオスになることが決まっていた上で、そう判断したわけです。
まとめると、私たちは多様なチャンピオンをリリースできるスケジュールを組みたいと考える一方で、強烈なインパクトやワクワク感を生み出す絶好のチャンスだと判断したときには、これを犠牲にすることもいとわない姿勢で開発に臨んでいる、ということになるでしょうか。
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