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GIANTS & POP/STARS:サウンドデザインが生み出す音楽のかたち

K/DAとTrue Damageスキン用SFX(サウンドエフェクト)のデザインにまつわる開発舞台裏エピソードを紹介します。

Riot Cashmiirによる

拝啓 ミュージック様

あなたを、愛しています。

敬具
Riot Games

正直な話、私たちはゲームを作ってなかったら音楽を作っていると思います。もうこれまでにメタルアルバム2枚、Worldsアンセム6曲、数え切れないほどのチャンピオンテーマ曲、ベストセラーになったK-POP、それからヒップホップ/トラップ/EDMのハイブリッド曲をリリースしていますからね。

ただK/DAとTrue Damageの楽曲をゲーム内のSFX(サウンドエフェクト)に落とし込む時には、私たちも多数の新しい課題と直面することになりました。それまで現実世界の楽曲に合わせてスキンを制作した経験がなかったので、何もかもが初めての試みだったのです。

これについて詳しくお話する前に、まずはLoLにおけるSFXデザインの概要を説明しましょう。

SFXって…どこから手を付けるの?

LoLのサウンドデザインは他部署と連携しつつ行われる業務です。SFXは各スキルの仕組みを示すものでなくてはなりません。強烈なスキルや攻撃は、そのSFXも強烈に響かなければなりません。スタンさせられた時の音はクマ用のワナを踏んだときのように感じられねばなりません。そして何より、ゲームプレイを邪魔しないものでなければなりません。

想像してみてください。

自分のメインチャンピオンに素敵な新スキンがリリースされたのでさっそく購入。アニメーションも見事。レーン戦も快勝。さあ集団戦を仕掛けるぞ。ところが集団戦直後にあなたが受け取ったのは、大活躍したあなたを称える味方の?ピン連打ではなく、戦意喪失した相手チームからの「20分で降参するわ」という全体チャットでもなく、「そのスキンのSFX、音が大きすぎてみんな耳がイカれたわ gg」という苦情だったとしたら。

これを予防するのもサウンドデザイナーの仕事です。スキルを音で判断できるようにしつつ、バランスも取らねばなりません。でもこれを「楽曲」という制約の中で実現する方法となると、これは一筋縄ではいきませんでした。

ゲーム中で最もリアルなサウンドデザイン

K/DAは私たちにとって未知への挑戦でした。そこでサウンドデザイナーのJulian “Riot Zimberfly” Samalは、まずK-POPをひたすらに聴き込んでK/DAの構成要素とそれ以外を理解しようと試みます(当時はまだK/DA自体何もできていない状態でしたが…)。

そして長い長い研究の結果(要するにK-POPをひたすら聴き続けた結果)、彼は初期バージョンの『POP/STARS』と合致する、K/DA用サウンドのサウンドパレット(サウンドの方向性を定義する要素)となる形容詞をEdgy、Glamorous、Bombastic(輪郭がはっきりした、魅惑的な、華々しくも気高い)の3つまで絞り込みます。

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Early version of “POP/STARS”

Riot Zimberflyは当時を振り返ってこう語っています。「とにかく“本物”の音を作りたかったんです。『POP/STARS』の作曲家であるSebastien Najandがこれでもかと情熱を注ぎ込んで作ってくれた曲ですから。あの曲はK-POPへのラブレターなので、ゲーム内のサウンドもそれに相応しいものにしたかった」

またRiot Zimberflyはスキンの初期コンセプトアートにも合致したサウンドを作る必要もありました。甘ったるすぎず、ハードすぎない。エレクトロニックすぎてもいけない。スパゲッティの茹で具合と同じく、完璧な加減でなければならなかったのです。

Riot Zimberflyは振り返ります。「あの過程では本当にたくさんの事を学びましたし、その後は楽曲もどんどん成長・進化し、カギとなる転調とニュアンスが確立されました。最初に取り組んだのがアーリとイブリンだったので、この2人には何度も手を入れましたね。でもそのせいでカイ=サに着手する頃には僕のサウンドパレットも充実して変化を遂げていたので、アーリとカイ=サのテーマには明らかな違いが生じてしまっていました。このため、後工程で4人のチャンピオン全員をひとつにまとめあげるためのデザイン作業が必要になりました」

  • K/DAアーリのE用SFX初期版
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  • K/DAアーリのE用SFX最終版
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最初期のアーリのSFXはバブルガムポップ感がやや強すぎたので、Riot Zimberflyはクリーン度を高めたデザインパレットを新たに組み、SFXを作り直します。アーリのスキルセットは「ヒット感の強いインパクト」よりも「丸みを帯びた輝き」という雰囲気が強いので、SFXもパンチの効いた細かい音が多い『POP/STARS』を直接参照するのではなくK/DAにインスパイアされた楽曲に寄せています。とはいえ、楽曲とSFXの間で適切なバランスを取るには細心の注意を払う必要がありました。

この点についてRiot Zimberflyはこう説明します。「こういうスキンの場合、楽曲を各所に散りばめるのは簡単です。

ただプレイヤーに魅力的な音楽体験を届けることも重要ですが、ゲームプレイの邪魔をしないことのほうが重要なのです。一方で、楽曲の要素を一切含めないようにすると今度はスキンが空っぽに感じられてしまいます」

  • K/DAアーリの固有スキルSFX初期版(最終的にはアカリの「黄昏の帳」SFX)
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  • K/DAアーリの固有スキルSFX最終版
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サウンドデザイナーが一番気に入っているバージョンは最初期に作成したSFXだった、というのは時々あることですが、お気に入りイコール最良の選択というわけではありません。

「他の要素を一切無視してサウンドをデザインすることなんてできません。LoLのようなゲームの場合、すべては前後の文脈とチャンピオンのプレイスタイルのために存在するわけですから。カイ=サのプレイスタイルはアサシン的なので、突っ込んだ後はすべてを出し切ります。このため細心の注意を払わなければ簡単にSFXが過剰になってしまうんです」とRiot Zimberflyは語ります。

初期に作っていたカイ=サのSFXは、聴いた時の満足感がとても高いものでした…それ単体で聴いていればですが。しかしカイ=サメインがテストプレイをしているのを見ているうちに、Riot Zimberflyは自分がカイ=サというチャンピオンのプレイスタイルを考慮していなかったことに気付きます。ヴォイドシーカーを当て、キラーヴォイドで敵の後衛に飛び込み、持てる全てを使ってダメージを出し切る…そんな瞬間には、彼が組み込んだハーモニーやメロディーが過剰なものへと一転してしまっていたのです。

その後フィードバックを受けつつ調整を重ね、カイ=サのSFXはキビキビとした印象のものへと変化。最終的には華やかでありつつ気品を備え、そして何よりも「メロディーの鳴りすぎ」で他のプレイヤーの聴覚まで圧倒しないよう配慮したものになりました。

  • 通常カイ=サの全スキルSFX
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  • K/DAカイ=サの全スキルSFX
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このようにして過ちを修正しつつ、私たちはK/DAの開発を通じて多くを学びました。そして、その教訓を活かしたTrue Damageの開発はスムーズに進んだ…はずですよね?

巻き戻し

「私がプロジェクトに着手した時、『GIANTS』はまだ完成していませんでした」と、サウンドデザイナーJayvon “Riot Jirsan” Rymerは笑いながら振り返ります。「飛びながら飛行機を組み立てている感じ、というんでしょうか。K/DAに似すぎないようにしながら目標を実現するためには何をすれば良いのか、全然見えていませんでした。楽曲はラフしかなかったんです。ボーカルも一切入ってなかった。だからとにかく、そのラフを起点として作り始めていきました」

True Damageが複数ジャンルのハイブリッドとなることと雰囲気の大枠が確定したところで、コアチーム(プロジェクト初期に少人数で制作を進めるチーム)はまず「True Damageの各チャンピオンが聴いていそうな楽曲のプレイリスト」を作成していきました。このプレイリストはサウンドデザイナーがプロジェクトに着手する上での精神的な道標として一定の役割を果たしましたが、それでも初期のコンセプトアートと楽曲のラフに頼るしかない部分も多々ありました。

「ヤスオのSFXを終えたところで、エコーのビジュアルが凄くクールなコミックスタイルに決まったんです。あれを見てヤスオの方向性を調整し直すことにしました。True Damageとしての一体感がなければいけませんから。作り直す前のヤスオのSFXは通常スキンの影響を色濃く受けていたので細い感じの音がメインでした。でもエコーのビジュアルを見て、ヤスオももっとTrue Damage的にしなければユニットとしてハマらないと感じたんです。エコーのビジュアルは残りのチャンピオンに視覚だけでなく、聴覚的な方向性も与えてくれるものでしたね」とRiot Jirsanは回想します。

  • True Damage ヤスオのW用SFX初期版
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  • True Damage ヤスオのW用SFX最終版
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「総合的な一体感」はスキンシリーズを制作する時に必ず掲げる目標のひとつですが、True Damage(とK/DA)は同じビジュアルスタイルで揃えることになっていたので、この目標がより重要になっていました。しかもサウンドデザイナーは、これと並行してK/DAの時と同様に、楽曲・スキンシリーズ・チャンピオンが元々持っているテーマの3つの間でバランスを取る必要もありました。

このバランス取りが特に難しかったのがキヤナです。

「取り掛かり始めた時は“音楽がテーマとか最高!よし、サウンドパレットはこれで…あとは3つのエレメントにこれを当てはめていけば…”という感じだったんですが…氷、岩、草木を音楽に…する…?どんな音が鳴るべきなんだ?って感じでしたよ」Riot Strâtosは笑いながら振り返ります。

こうしてRiot Strâtosは試行錯誤を(何度も何度も)重ねることになりました。上手く機能するものもできましたが、機能しないものもありました。

True Damageのテーマから離れすぎないよう配慮しつつ、キヤナのスキルセットに有機的なサウンドとフィルターをいくつも重ね、最終的にはエレメントごとに4バージョンものSFXが作成されています。

キヤナ ― 草木エレメント

  • True DamageキヤナのW(草木)用SFX初期版
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  • True DamageキヤナのW(草木)用ゲーム内SFX最終版(バージョン1)
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  • True DamageキヤナのW(草木)用ゲーム内SFX最終版(バージョン2)
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  • True DamageキヤナのW(草木)用ゲーム内SFX最終版(バージョン3)
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  • True DamageキヤナのW(草木)用ゲーム内SFX最終版(バージョン4)
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キヤナ ― 氷エレメント

  • True DamageキヤナのW(氷)用SFX初期版
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  • True DamageキヤナのW(氷)用ゲーム内SFX最終版(バージョン1)
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  • True DamageキヤナのW(氷)用ゲーム内SFX最終版(バージョン2
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  • True DamageキヤナのW(氷)用ゲーム内SFX最終版(バージョン3)
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  • True DamageキヤナのW(氷)用ゲーム内SFX最終版(バージョン4)
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キヤナ ― 岩エレメント

  • True DamageキヤナのW(岩)用SFX初期版
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  • True DamageキヤナのW(岩)用ゲーム内SFX最終版(バージョン1)
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  • True DamageキヤナのW(岩)用ゲーム内SFX最終版(バージョン2)
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  • True DamageキヤナのW(岩)用ゲーム内SFX最終版(バージョン3)
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  • True DamageキヤナのW(岩)用ゲーム内SFX最終版(バージョン4)
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こうしてキヤナが操る3つのエレメントそれぞれのバランス取りを終えたRiot Strâtosは、続いてアルティメットに取り掛かります。掲げる目標はひとつ。(美麗すぎて)耳から出血するほど絢爛なサウンドを作り出す。それだけでした。

さて、これまで見てきたように、サウンドデザイナーはスキンに楽曲要素を入れすぎないように気をつけています。しかし時にはゲームプレイが音楽的要素を求める場面というのも存在します。アカリの黄昏の帳、キヤナの陰の道(草木の力)、セナの霧、イブリンのカモフラージュなどがまさにそれです。こういった場面では、雰囲気を作ったりテンションを高めたりするためにサウンドデザイナーも楽曲の一部を差し込むことができるのです。

しかしエコーにはステルス能力がありません。True Damageのフロントマンである彼が他のメンバーにスポットライトを取られてしまうのは看過できない事態です。

「エコーのスキンには元々DJソナ的なミュージックシステムがあるので、『GIANTS』要素はたくさん入っていたんです。でもプレイヤーのために、スキルを撃つ時に自分が音楽を生み出している感覚を出しかったんですよね」Riot Jirsanは語ります。

ミュージックシーンの神童のためのSFXがTrue Damageフレーバーに満ちたものでなければならないのは当然。しかし、そのためには鳴り続ける音楽とも折り合いをつける必要があります。そこでRiot Jirsanはスキルと音楽をインタラクティブに作用するようにし、そこでエコーらしさを表現するバランスを見つけました。

完璧なハーモニーを求めて

吹きすさぶK-POPの嵐であれ、強烈なTrue Damage(確定ダメージ)であれ、私たちが目指すのは「高度なアウトプレイが音楽を生み出している感覚」を提供することです。 

LoLはサウンドたちの成す交響曲であり、それは同時に10人のプレイヤーたちが織り成すものです。サウンドデザイナーは、ひとつの楽器が他の音を霞ませないようにすることを日々意識しています。何より、私たちの究極的な目標は「あなたが」イカシアの雨でダブルキルを挙げた時、True Damageエコーでペンタキルを達成した時にWorlds Final(決勝)の歓声が聞こえてくるような体験をお届けすることですから。

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