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/dev:チャンピオンバランスの基本的な枠組み

バランス調整の方法と過程について。

RiotRepertoirによる

バランス調整に関しては、決していいことばかりが言われるわけではありません。過去9年間(!)を振り返ってみても、ひとつのパッチサイクル内で達成しようとしている目標が、必ずしもプレイヤーに理解されているわけではありませんでした。しかし、私たちはその状況を変えたいと思っています。

そこでこちらの「チャンピオンバランスのフレームワーク(基本的な枠組み)」記事で、毎回のパッチで実施されるチャンピオンの強化(バフ)/弱体化(ナーフ)へのバランス調整チームのアプローチを、皆さん全員に向けて詳しく説明してみたいと思います。実は少し前から、私たちはサモナーズリフトにおけるチャンピオンの強い/弱いを判断する基準に手を加えてきました。基準の変更がある程度軌道に乗った今、このアプローチを正式なものとしてお知らせしたいと考えています。そうすることで皆さんがゲームへの変更点が気に入らなかった場合でも、少なくとも私たちがその変更を行った“理由”については理解してもらえるのではないかと思います。

特定のチャンピオンを強化/弱体化の候補にあげるべきかどうかを判断する際に、チャンピオンのパワーレベルについて私たちは評価基準を設けています。以下は、その基準に一貫性を持たせるために用いらる方法論です。このようなアプローチをとることで、今後はバランス調整に一貫性が感じられるようになり、より良い理解を得られるようになればと願っています。

過去のチャンピオンバランス調整

一番の狙いは、バランス調整の施策に関して透明性を高めることで、私たちのバランス調整へのアプローチに一貫性を感じてもらうことです。アプローチの一貫性が高まれば信頼性も高くなるのはもちろんですが、その理由は、これまでの個々のバランス調整や今後起きうるバランス調整の問題以上に、一貫性を欠いたバランス調整へのアプローチこそが、何よりもプレイヤーにフラストレーションを与えるものだと考えられるからです。

この狙いを達成するために、チャンピオンの“パワーレベルの評価過程”に主観が入り込む余地を制限するシステムを導入します(“パワーレベルの指標そのもの”ではなく)。これによって、強過ぎたり弱過ぎたりするチャンピオンを見過ごしてしまうことが少なくなり、思い込みにもとづいたリスクの高いバランス調整を避けることができるでしょう。

新たなアプローチ

これまで私たちは、“プラチナ以上の試合を対象にバランスを調整する”という大まかなガイドラインをもとに調整に当たってきました。しかしそれにもかかわらず、他の条件や理由も根拠にしてバランス調整を実施していました。そこで、今後はサモナーズリフトのバランス調整を行う際や、チャンピオンが強過ぎるか、弱過ぎるか、またはバランスが取れているかを判断するパラメーターを見る際に、正式に「4つの異なるプレイヤー層」を考慮するようにします。その4つのプレイヤー層は以下のとおりです。

平均的なプレイヤー

ほとんどのプレイヤーはこのグループに入っていて、ソロキューの上位10%よりも下の全プレイヤー(大まかに言うとゴールドまで)が対象となります。ゲームバランスの調整は、もっともハイレベルなプレイヤーのみを念頭に置いて行うべきだと考える人もいるでしょうが、私たちはLoLの魅力を高めるにはスキルレベルにかかわらずバランスの取れた体験を提供することが重要だと考えています。とはいえ、このグループの体験は繊細なバランス調整にそれほど敏感ではないとも考えられるため、“強過ぎる”チャンピオンの定義はそれほど厳密ではありません。

このグループではチャンピオンのパワーレベルの指標として、勝率をもっとも重視していますが、それにバン率を組み合わせることで、グループのプレイヤー間で強過ぎるチャンピオンが明確に見えてくるようになります。どういうことかと言うと、バン率が“グローバルな平均バン率”(略してABR、現在は~7%)を上回れば上回るほど、そのティアにおけるチャンピオンのパワーレベルの指標として重視され、逆に許容される“勝率の幅”は狭くなります。

  • 上限:勝率54.5%(平均バン率を下回るバン率の場合)~勝率52.5%(平均バン率の5倍のバン率の場合)
  • 下限:勝率49%

ハイスキルプレイヤー

このグループは、最上位帯のプレイヤー(=次段落のグループ)を除いた、ソロキュープレイヤーの上位10%で構成されています。「平均的なプレイヤー」のグループと似ているものの、パワーレベルに対してはより敏感です。そのため、強過ぎるチャンピオンを判断するパラメーターがより厳密になっています。

  • 上限:勝率54%(平均バン率を下回るバン率の場合)~勝率52%(平均バン率の5倍のバン率の場合)  
  • 下限:勝率49%

エリートプレイヤー

このグループは、トップの中のトップであるソロキュープレイヤーの上位0.1%を意味します。このグループはソロキューの全グループの中でバランス調整に対してもっとも敏感であるため、独自のバランス調整が必要になります。他のソロキューのグループとは異なり、このグループではどのチャンピオンが強過ぎるかを判断するために利用可能な勝率のデータが不足しています(プレイヤー人口が極端に少なく、サンプルサイズが小さくなってしまうため)。データの有無にかかわらず、これらのプレイヤーはゲームを隅々までマスターしているために、各チャンピオンのパワーレベルはチャンピオン選択に正確に反映されると考えられます。そのため、パワーレベルを判断するにあたっては、バン率に加えてピック率を参照します。逆に、ソロキューの他のティアではピック率を強さの指標としては用いていません。このティアではプレゼンス(Presence、登場率)という新たなコンセプトが用いられます。これはそのチャンピオンのピック率とバン率を足したものです。

  • 上限:バン率45%
  • 下限:プレゼンス5%

プロプレイヤー

このグループにはLoLの全競技リーグの中の上位5リーグが含まれています(現在はLPL[中国]、LCK[韓国]、LEC[ヨーロッパ]、LCS[北アメリカ]、LMS[台湾・香港・マカオ])。「エリート」と似ていますが、このグループでチャンピオンのパワーレベルを判断する際は、チャンピオンが使われた試合での勝敗よりも、チャンピオン選択時のピック/バン率を重視します。特定のパッチでピックされなかったからといって、このグループ内において対象のチャンピオン自体が実際に弱いのか、それとも現在のメタではピックすることができなかっただけなのかは議論の余地があります。ですが、私たちは現在のメタという文脈においてはそのチャンピオンが弱すぎると判断し、メタ内でのパワーレベルのバランスを取ることを良しとしています。

  • 上限:現在のパッチでプレゼンス90%、または複数のパッチで連続してプレゼンス80%
  • 下限:プレゼンス5%

今後は、これらすべてのグループでバランスが取れていると考えられる場合にのみ、対象のチャンピオンがサモナーズリフトでバランスが取れていると判断されることになります。これら4グループの上限を1つでも超えるチャンピオンは強過ぎるとみなされ、4つのグループの下限をすべて下回った場合には、総体的に弱過ぎるとみなされます。

実際のバランス調整においては、上記の条件で総体的に強過ぎるとみなされたチャンピオンに対して優先的に、直ちにバランス調整が実施され、その後、全グループで弱過ぎるとみなされたチャンピオンのバランス調整に取り組みます。それが終わったら、一部のグループでのみバランスが取れていないチャンピオンの調整を行います(たとえば、1つか2つのグループでしかバランスが取れていないケース)。

データをもとに変更を行う

バランス調整の対象となるチャンピオンが確定したら、どのように調整を行うべきかについてじっくり考えます。これに関しては確立したフレームワークはありません。これまでと同様に、プレイヤー層のニーズに対する私たちの理解と経験を活かして妥当な変更を行います。しかし、バランスの取れていないチャンピオンを特定する上述のシステムを活用することで、バランスがおかしくなっている部分を以前よりも簡単に改善できるようになるだけではなく、どうしてそうなっているか理由を追究しやすくなり、実際にどのように対処すべきかということも考えやすくなります。簡単に言うとこのフレームワークによって、たとえば最近の事例では「ヘカリムのようなチャンピオンは強過ぎる」という指摘に対して、速やかに意見を一致させられるようになり、修正方法の検討により早く移行できるようになります。

だけど…

(質問コーナー)

新しいチャンピオンやリワークされたチャンピオンについてはどうするの?

新しいチャンピオンとアップデートされたチャンピオンはリリースされてから1ヵ月経過するまで、これらのパラメーターでは判断しません。そうしたチャンピオンは使用するプレイヤーにとっても敵として対峙するプレイヤーにとっても、まだ学習の過程にあり、リリース直後は実際のパワーレベルは統計データに反映されないでしょう。

ここ数年というもの、新しいチャンピオンやアップデートされたチャンピオンのバランスを上手く調整できていませんでした。今回、通常用いているバランス調整のアプローチ以外のところで新システムを導入したのは、そのような理由からです。

このシステムでは、対象のチャンピオンのリリース時に予測されるパワーレベル、リリースから数日後/数週間後に予測される勝率の伸び、予測通りの勝率にならなかった場合の対処方法などが考慮されます。これで今後は、新しいチャンピオンやリワークされたチャンピオンが、リリース後にバランスの取れていない状態のまま長い間放置されることはなくなるでしょう。

プレイ率の高いチャンピオンは?

統計的にはパワーレベルが同等であっても、勝率に関係なく、より多くの人にプレイされる人気チャンピオンというものは当然存在します。そうした人気度を元にチャンピオンを弱体化するのはあまり好ましくないと私たちは考えています。ヤスオやリー・シンは、全体的な勝率の変化に関係なく、常にプレイされ続けているチャンピオンの好例でしょう。“プレイ率の変化”を考慮すべきかどうかも検討されましたが、プレイ率とパワーレベルには明確な相関性がないことから、フレームワークに追加すべき十分な根拠があるとは思えませんでした。唯一の例外である最高レベルのプレイヤー帯においては、プレイ率をパワーレベルの指標として用いています。

習熟曲線が険しいチャンピオンは?

習熟曲線(英語ボード)とは、プレイ時間の長さに応じて、そのチャンピオンをどれくらい効果的にプレイできるようになるかを示したものです。オレリオン・ソルやカタリナのように習熟曲線が険しいチャンピオンは、使い始めたばかりのプレイヤーよりも、経験豊富なプレイヤーが使用する方が勝率が高くなる傾向があります。

私たちは、強化または弱体化すべきチャンピオンを決定する際には、意図的に習熟曲線を考慮しないようにしています。それは、時間をかけて特定のチャンピオンをマスターした努力が無駄になるようなシステムは導入したくないからです。また、習熟度が高まることで強過ぎる状態になるチャンピオンがいたとしても、そのチャンピオンはプロのプレイで注目されるようになり、エリートのプレイではバン率が高まって、結果的に弱体化につながると思うので、これに関しては楽観視しています。

強いフラストレーションを感じるチャンピオンは?

あるチャンピオンを使っていて、もしくは相手にしてフラストレーションを感じる理由は、現状の“パワーレベル”であったり、“機動性”であったりと様々です。問題の原因をピンポイントで特定する上で、アンケートのデータやプレイヤーの意見を見ることに加えて、上述のフレームワークも役に立ちます。明確で客観的なバランスの制限値を設定しておくことで、バランス調整から、さらに進んでフラストレーションを感じるゲームプレイを解消する必要がある場合にも、それを見定めることができます。これら2つは必ずしも相反するものではありません。パッチ9.10でのリヴェンのEのクールダウンの延長がこの好例で、チャンピオンのパワーレベル低下と“フラストレーション”の解消を同時に狙ったものです。

地域ごとの違いは考慮しないの?

私たちが用いているデータは地域を限定したものではなく、全世界から集計されたものです。地域ごとにチャンピオンの勝率が変わる可能性はありますが、グローバルなデータを利用することによって、どの地域が上手くプレイできているか(またはできていないか)にかかわらず、「変更することで何が解消されるのか」という点がプレイヤーにとって、より明確になることでしょう。

他の地域とは大きく異なる一部の地域のごく少数の体験にもとづいてチャンピオンの調整を行えば、他の地域ではパッチノートで言われていることが理解できないという問題が起こるでしょう。特定のトレンドや特に変わったプレイスタイルが継続するなら、それはグローバルなデータにより顕著にあらわれることになるので、いずれは私たちが変更を行い解消できるようになると考えています。

重要なことは、パッチノートの変更がプレイヤーにとって理解不能に感じられる状況をできる限り減らすことです。特定の地域で起こっていることを理由に弱体化を説明するよりも、異なる“プレイヤー層”にもとづいたバランス調整の理由を説明する方が容易だと思います(「平均」、「高スキル」、「エリート」の各プレイヤー層は全地域に存在するので)。   

強化または弱体化すべき対象のチャンピオンがいない場合は?

それはリーグ・オブ・レジェンドのバランス調整が完了したということです。私たちは荷物をまとめて退散することにしましょう。

しかし実際には、強過ぎるチャンピオンや弱過ぎるチャンピオンのほとんどが解消し、安定した状態になったとしても、全プレイヤー層でチャンピオンのバランスを取ることや、現在設定している上限と下限のパワーレベルの幅が最新のニーズを正しく反映しているかどうかを再評価することが次に優先すべき目標になるでしょう。これらのパワーレベルの幅を徐々に狭めていくことは可能だと思っています。また、ルーンやアイテム、ポジションなど、バランスを考慮すべき対象はチャンピオン以外にも常に存在しています。

じゃあアイテムやサモナースペル、ジャングルについては?

LoLのバランスを調整するにあたって考慮すべき対象はチャンピオンのパワーレベルだけではないことは確かです。しかし、プレイヤーは常にチャンピオンを通してゲームを体験することになりますし、もっとも共感できるゲーム内の要素はチャンピオンだとも言えるでしょう。

パッチ内の他の調整のほとんどは、このアプローチで対処できます。たとえば、リフトスカトルの出現タイマーへの変更は幅広いチャンピオンがジャングラーとして選ばれるようにするためのものでした。「アーデントセンサー」を弱体化/変更したのは、プレイヤーがエンチャンターチャンピオンをピックすることを義務と感じないようにするためでした。一般的に言って、システム内のコンテンツのパワーレベルが高過ぎて、それによってプレイしたいチャンピオンが左右されるのであれば、ほとんどのプレイヤーにとってLoLの魅力は薄れてしまうでしょう。     

新システムやバランス調整全般に対して意見がある場合はどうすればいい?

ぜひお聞かせください!このような新しいアプローチを取ることで、最終的にはあらゆるスキルレベルのプレイヤーにとって、より一貫性のある、バランスの取れたゲームプレイが実現できると考えていますが、プレイヤーが自分の体験にもとづいて考えたときに、チャンピオンの強化や弱体化が理にかなっていないと感じるのであれば、積極的に調整を検討したいと考えています。チャンピオンの強化や弱体化をプレイヤーの皆さんに100%理解してもらうことは不可能かもしれませんが、このシステムによって、少しでも100%に近づけられればと願っています。

お読みくださりありがとうございました!サモナーズリフトチームを代表して、皆さんからのご意見をお待ちしています!

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