Ask Riot

LoLやRiotに関する質問をお送りください。回答は日本時間の隔週金曜日に掲載されます。

質問を入力してください

エラーが発生しました。再度お試しください

ご質問ありがとうございました!

次の記事

カイ=サ

“ヴォイドのADC”というコンセプトが“虚無を知る娘”になるまで。

DyQuillによる

捕食者とその獲物という関係性しか存在しない世界を、カイ=サは生き抜いた。ヴォイドの淵で何年も過ごしたにもかかわらず、彼女は穢れを受けることも、生命の存在できない紫色の破滅に呑み込まれることもなかった。しかし、悪夢のような生物たちとの生存競争にどれだけ勝ち続けようとも、その戦いが終わることはなかった。

“虚無を知る娘”は自身の体に宿る寄生体が鎧となる第二の肌をまとっている。寄生体に十分な餌を与えてやらなければ、彼女自身が食べられてしまうだろう。終わることのない恐怖に今も追われているものの、彼女は観察を通じて学び、自身の捕食性を効率的に進化させた。キャラクターとしてもチャンピオンとしても、カイ=サは非常に独特な存在だ─彼女は無防備な標的であると同時に、恐ろしい捕食者でもある。

狩られる者から狩る者へ

「上手くいくとはまったく思っていませんでした。ADCアサシン、なんとも恐ろしいアイデアです。心の中では誰かに『やめておけ』と言って欲しいと思っていました」とJeevun “Riot Jag” Sidhuは言います。

相手に接近して戦いを挑む、アグレッシブなマークスマンを作り出すことが狙いでした。カギとなるのは、強引に戦闘に持ち込み、自分に最適な戦い方を選ぶことができるスキルです─ゲームプレイデザイン用語で言うと、「影響力の大きい」チャンピオンとなります。

カイ=サには「ただ与えられた」選択肢でなく、「自ら選ぶことが可能」なスキル構成が必要でした。「良いADCの特徴は、賢いターゲット選択です」とRiot Jagは言います。通常、マークスマンはターゲットを遠くから狙い、安全な距離を保ちながら攻撃します。しかし、カイ=サは接近戦を避けながらカイト(引き撃ち)を続けるだけの“カイトマシン”以上の戦い方が可能です。

名称未定の“ヴォイドADC”のテーマスタディ

カイ=サのアルティメットを使えば、文字通り集団戦のどこにでも現れることができるので、他のADCには真似できないプレイが可能です。味方のマオカイが「樹人の進撃」で敵の後衛を捕まえたら、カイ=サはそれに続いてすぐさま敵陣深くまでダイブして、行動妨害を受けた不運な敵を一掃できます。ただし、この高い機動性には代償が伴います。

「彼女はここ5年くらいの間にリリースされた中で唯一、行動妨害を一切持たないチャンピオンです。ダメージを出すことしかできないんです」とRiot Jagは言います。言うまでもなく、彼女は戦闘をしかける手段は持っていますが、そこから脱出する手段はひとつも持っていません。

この弱点によって「ADCアサシン」としての大きなパワーとのバランスが取られています。カイ=サは相手をバースト(瞬間火力)で上回って力ずくで倒すのではなく、敏捷性と周到な計画で裏をかいて相手を出し抜く必要があります。

ヴォイドの新たなビジョン

次にリリースするマークスマンがオールインに特化したチャンピオンになることは決まっていましたが、それがヴォイド出身のキャラクターになるとは決まっていませんでした。

「最初は生命の源を吸収するゾウン出身のキャラクターを考えていたんです。でも、このチャンピオンはあらゆる面で捕食者のように感じられたので、実際に捕食者である何かに結びつけることが理に適っていました。その動物的な本能の根拠として、ヴォイドが何度も話題にのぼったんです」とWillem “Riot Tokkelossie” van der Schyfは言います。

コンセプトの習作——左から、元不浄殲滅者、“吸血鬼”、ヴォイドのウィルスと結ばれた人間。

彼女の捕食者としての性質の根拠について考えているうちに、開発チームの思い描くアグレッシブなプレイスタイルを上手く表現できるコンセプトが見つかりました─ヴォイド“ジェットパック”です。これなら見た目が特徴的であるだけでなく、キャラクターが持つスピードとパワーの両方が一目で伝わります。

ジェットパックのアイデアによって、破壊力よりも敏捷性に優れるチャンピオンという、ヴォイドのキャラクターとしてのユニークな切り口が明確になりました。

洗練された“エンジン”のデザイン

「彼女のデザインには“方向”を意識した形を使うことに決めました。彼女の体は前方を示す矢印のように、全体が逆V字型(シェブロン)になっています。あらゆるデザインが、彼女の動きを感じさせるようになっているんです」とRiot Tokkelossieは言います。

次に決めなければいけなかったのは、具体的にどんな銃を使っているのかという点です。

スーツと同じバイオマスで作られたヴォイドのライフルなど、手から生えている武器を色々と考えてみましたが、ゴツゴツした銃はカイ=サの素早い動きや対称的なビジュアルデザインに合っていませんでした。それに、マークスマンにライフルではオリジナリティーに欠けます。

「他とは違うADCを作るチャンスだったので、単純に銃を持たせるのは避けたいと思いました」とRiot Tokkelossieは言います。最終的に、開発チームは結晶化したヴォイドの武器に決めました。これはカイ=サの下半身の甲皮から流れるエネルギーによって形成されたものです。

混じり気のない純度100%のヴォイドの結晶でできています。

さらに、カイ=サに関しては”ヴォイドっぽさ”でも独自性を持たせたいと考えていました。

「彼女はモンスターではなく、ヒューマノイドにしたいと思っていました。ヴォイドで生まれたモンスターや、ヴォイドによって精神と体を穢された人間はすでにチャンピオンとして存在していましたので、ヴォイドの世界で生き残ったキャラクターを作りたいと考えたんです」とMichael “CoolRadius” McCarthyは言います。

生存者の視点で語られる、人間の目から見たヴォイド─見捨てられたことによって受けたトラウマと、生きるために戦いを余儀なくされたという設定が、カイ=サのキャラクターデザインの核となりました。

ヴォイドライフルの習作

「生存者となった人の精神状況や極度のトラウマへの対処について多くのリサーチを行いました。それらの体験によって抜け殻になってしまう人もいますが、それを克服できた人は自らを失うことはありませんでした。何かにしがみついていたのです」とCoolRadiusは言います。

初め、カイ=サはただの犠牲者であり、ヴォイドに破滅させられかけますが、自身の人間性のすべてを放棄することを拒み、なんとか抵抗して適応します。彼女は苦難を力の源に変え、危険な生命体を鎧に変えて自身の体として受け入れる妥協点を見つけました。たとえモンスターの宿る体になっても、彼女は人間性を維持したのです。

「ヴォイドスーツとマスクが常に装着されていると、自己を失っているように感じられてしまいます。スーツのパワーを最大限に活用するのか、抑制するのかは彼女の選択にしたいと考えました」とRiot Tokkelossieは言います。 

紫色の音

その選択がもっとも明確に現れているのはカイ=サのヘルメットです。これにはDJ ソナの曲の選択に使われたものと同じ技術が使われていて、カイ=サがダッシュすると自動的にヘルメットを装着しますが、自由にオンオフを切り替えることも可能です。マスクを被ることで、彼女は捕食者になるというわけです。

00:00

マスクなし、マスクあり

「実際に彼女の甲皮を装着したような気分になれますよ」とBrandon “Riot Sound Bear” Readerは言います。彼女の甲皮は生きたヴォイドの生命体であるため、マスクを被った状態のカイ=サの声は、他の“=”マーク付きのチャンピオンたちと同じ音響特性を持ったものに変わります。

「彼女のサウンドは非常に丸みのある、紫色の音です」とRiot Sound Bearは言います。これはその音が暗くて深く、低音が多い傾向にあることを意味します。逆にピンクなサウンドと言うとこれよりも遥かに高い、中音域の音になります。

「レーザーのようですが、ベタベタ、ネトネトしていて、鋭くもノイズっぽくもありません。もっと喉から出すような音です」と彼は付け加えます。

他のヴォイドチャンピオンと同じサウンドを使えばテーマ上のまとまりが得られるだけでなく、それをリミックスしたり変化させたりして発展させることも可能です。「実際、リコール時のヴェル=コズの目の動きに使われていたサウンドが、カイ=サの移動音に再利用されています」とRiot Sound Bearは言います。

00:00

かつては目玉の回転音、今はカイ=サの移動音。

カイ=サ独自のヴォイドのサウンドを探すために様々な実験を行っていたことで、偶然生まれたサウンドもあります。

「ある時、音を下げるレジスターキーを間違って小指で触ってしまったことで、かっこよく低音が膨らむプラグインができました。これが固有スキルの5ヒット目のサウンドに使われています」とRiot Sound Bearと言います。

00:00

偶然のサウンド、そして最終的に使われたサウンド。

これらすべてのサウンドを組み合わせることで、ヴォイドの捕食者─そしてその下にある人間の姿を音で描くのです。

「そうして描き出された姿に、プレイヤーが自分自身を投影してくれたら嬉しいです」とRiot Sound Bearは言います。「自分はヴォイドと戦いながらも共生する存在で、武器もある。さあ、ここからどう生き延びていこうか?」

答えはあなた次第です。

次の記事

/dev:型破りな楽器と新たな楽譜