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エモートの人間的側面

より良いLoLを目指して奮闘するライアット プレイヤーラボチームの仕事とは。

皆さん、こんにちは!

インサイトチームの狙いは、科学的な根拠に基づいた幅広いリサーチと体系化された思考法を使って、プレイヤーのニーズ、望み、行動、考えなどをライアットの戦略的意思決定に反映させることです。過去の投稿では私たちが行っている定量分析についてのお話が中心でしたが、今回はインサイトチーム(英語ページ)がライアットの意思決定を支える際に用いている、その他の方法を皆さんと共有したいと思います。

この投稿では、観察リサーチを行うラボが、LoLのエモートシステムのデザインと開発にどのように貢献したのかについてご紹介します。定量分析は多数のプレイヤーの行動を分析するなどといった、行動の“内容”を把握するのに適していますが、ラボは個々のプレイヤーが自分の行動や体験についてどう考え、何を感じているのかを深く掘り下げて考察する、行動の“理由”を探るのに適しています。

 


表現システムとしてのエモート

“リアルタイムな表現”のシステムをデザインすることになったのは、ゲーム内での自己表現や自分に対する評価を求めるプレイヤーのニーズに、LoLがどれだけ応えられているだろうかと考えたことがきっかけでした。ゲーム内ではスキンや意思表示ピン、チャンピオンマスタリーなどといった一般的な自己表現やカスタマイズの手段はある程度提供できていましたが、LoLのプレイ中に感じた気持ちを瞬間的に、そして積極的に表現する手段は存在していませんでした。さらに、私たちはこのシステムを「バロンを獲ろう!」といった実用的なコミュニケーション手段にすべきか、「ナイスプレイ!」などの感情表現や他者を評価する手段にすべきかを決めかねていました。ここを出発点として、私たちはこのシステムのあるべき姿と、その実際の利用価値を探るためのテストを開始しました。

リサーチラボで表現システムに取り組む際の主な狙い

  • システムが“表現寄り”であるべきか“コミュニケーション寄り”であるべきかを判断する
  • ゲームプレイを邪魔しないながらも、印象的な楽しいシステムになるバランスを見つける
  • こういったデザインのシステムをプレイヤーがどのように使用し、どういった反応を見せるかを観察する
  • このシステムが持ちうる面白さや魅力を把握する

ラボの実施中に私たちが頭に留めていた数多くの検討事項のなかの一部

  • ラボは言うなれば“人工的”な環境であるので、“一方向に偏った傾向”しか観察できない可能性があることを考慮しておく必要がありました。もしラボのプレイヤーがこのシステムをまったく使わなかったら、そこからは“現実世界”でもあまり使われないだろうという知見を得られます。ですが逆に、ラボのプレイヤーがこのシステムをたくさん使ったとしても、“現実世界”のプレイヤーも同様にたくさん使用するだろうとも、さらにはシステムの使い方も同じになるだろうとも結論付けられないのです。
  • このラボはライアットのLAX(ロサンゼルス)キャンパスで実施されました。入ってすぐのところにアニーとティバーズの巨大な像がある建物です。したがって、ラボでのフィードバックについて考える際には、プレイヤーはそこにいられるだけで、そして誰も見たことがない新機能をテストできるというだけでとても興奮しているという点を考慮しておく必要がありました。そのような興奮した状態では、通常のゲーム内で目にした時よりも、そのコンテンツをカッコよくて面白いと感じてしまう可能性があるからです。

私たちは数人のLoLプレイヤーを招待して、初期の表現システムのプロトタイプを試してもらい、その感想を聞きました。ラボは以下のような形で行われました。

 


エモートラボのタスク内容

 

まず最初に、テストに参加したプレイヤーに、LoLの既存機能の内、彼らが“エモート”として認識しているものの印象と使用体験について聞きました。 これは、プレイヤーが新たなコンテンツに触れて影響を受ける前に、彼らの認識の基準を知るためです。

 

次に、システムおよびコンテンツのプロトタイプやコンセプトをいくつか紹介して、彼らの第一印象の反応を見ました。 私たちは、自分の体験のみについてフィードバックするよう、プレイヤーを誘導しました。“他の人がこのコンテンツに触れた時にどう感じるかについての予想や考え”ではなく、彼ら自身がコンテンツについてどう感じたのかを理解するためです。

 

次に、プロトタイプのエモートシステムを使って5v5のプレイテストを行い、プレイヤーにプレイ中に実際にシステムを体験してもらい、私たちはその様子を観察しました。

 

プレイテストが終了したら、ゲーム内での体験について、簡単な個人アンケートに答えてもらいました。 プレイヤーの率直な感想を得るために、アンケートはプレイテストの直後に行いました。そうでないと、試合後に他のプレイヤーや調査員と話をして影響されたり、先入観を持ってしまう可能性があるからです。

 

最後に、全プレイヤーに共通する意見や感想を把握するためにグループディスカッションを行いました。 このようなディスカッションは、コミュニティーや会話による影響でプレイヤーの認識がどのように形成されるのか、または変化していくのかについて、ヒントをくれる場合があります。

 


観察

これらのタスクを行っている間、私たちはプレイヤーを観察して録画していました(もちろん、明示された同意の上でです!)。これは、“システムをまさにその瞬間に使用している時のプレイヤー体験”をより良く理解する助けとなりました。以下のプレイヤー体験の例は、このシステムを“プレイヤーの自己表現を強化する方向”に進ませるべきだと確信させてくれたものの一つです。これは一方のチームが圧勝している試合の中で発生したもので、両方のチームにとって一方的な展開を少し楽しく、明るいものにしてくれました。


ディスカッション

グループディスカッションの中では以下の二つの発言が特に記憶に残りました。

ジンではなく、ジンをプレイしている人の存在をより感じられた
このコメントがきっかけで、表現システムはこのゲームに人間味を加えることができると気付き、“試合開始時”のエモートを追加しました。チャンピオンの向こうには、本物の人間がいることを試合開始時に感じてもらうためです。
攻撃するという行為以外で、敵とやり取りできるのが良かった
このコメントがきっかけで、挨拶や“クリーンプレイ”など、敵とのやり取りに使えるエモートを増やそうと考えました。

デザイナーによる観察

システムを開発しているゲームデザイナーたちも別室でライブストリーミングによってリサーチラボを観察していました。デザイナーは自分たちが作ったエモートをプレイヤーが見て、試して、壊して、好きになったり、嫌いになったりしているのを観察するのが大好きなのです!デザイナーたちによるライブ観察により、以下の改善が行われました。

集団戦中に画面がゴチャゴチャしてしまう → 使用回数制限システム + 破壊ルールの導入
そもそも使用されるのはゲームプレイに集中する必要がない時が中心となっている → レーンに向かう時の挨拶などのような場面を想定してデザインする。

私たちは観察から得られた結果を“プレイヤー体験についての確定的な真実を示唆するもの”としては解釈せず、将来のリサーチ、デザイン、分析でテストすべき明確な仮説を作る際に使用しました。

 


ラボ終了後

ラボセッションが終わった後、私たちは内容を詳細にレビューし、メモやビデオを比較して結論をまとめ、それらをデザインチームや開発チームにどう伝えるかについて考えました。

この記事では一つのラボのタスクと観察のみをご紹介していますが、エモートのデザインにはプレイヤー参加の複数のリサーチラボ、無数の内部プレイテスト、ライブサーバーでのテストや分析(Worldsチームエモート、スノーダウンエモート、URFモードエモート、マスタリーエモート)などから得られたさまざまな情報が考慮されています――そしてそれすら、インサイトチームのみの貢献を数えた場合でしかありません。このようなインサイトの作業は、デザイナーや開発者が素晴らしいコンテンツを作成するために日々行っている大変な仕事をサポートするための、多くの努力のうちの一つに過ぎないのです。

 


現在のエモートシステム、そして未来へ!

システムデザインにはラボからの情報が活用されていますが、このシステムをLoLで当たり前に使われる表現ツールにするためには、まだまだ行うべき作業が残っています。ローンチ時には少量のコンテンツしかリリースできませんでしたが、今後もエモートシステムにはさらなるコンテンツを追加していきたいと考えていますし、RPなしでこの表現手段をプレイヤーが使えるようにする新たな方法を複数導入するつもりです。

私たちは常にシステムの改善を続けています。一般公開されたことで、プレイヤーがどのようにシステムを利用しているのかについてのさらなる分析が可能になり、システムにさらに磨きをかけることができるようになりました。充実した感情表現システムを目指して、これからも開発を続けていきます!

 


ラボを活用する理由

今回のエモートシステムのデザインは、意思決定の指標を見つけたり、プロダクトデザインがプレイヤーに与えるプラスの影響を大きくしていく方法として、生のプレイヤーによる体験やフィードバックを活用したほんの一例に過ぎません。

ラボ(およびその他のインサイトの作業)の目的は、コンテンツをどのようにデザインして、どのような変更を加えるべきかを開発チームに伝えることではありません。しかしときに、全体的な方向性に大きな影響を与えることがあります。エモートシステムの場合にはラボを実施したことで、“ゲーム中の緊張感が低くなった時の交流”や、“画面の向こうに生身のプレイヤーがいると実感してもらうこと”がデザインチームが集中すべき部分であるとピンポイントで特定することができました。

私たちはこういったプレイヤーから直接もらうフィードバックを非常に重視しており、なんとつい先日、新たなラボスペースまで作りました!これまでテストに同時参加できる人数は12名まででしたが、これからは同時に60名のプレイヤーでテストを実施できるようになります!さらに設備も充実させ、リサーチャーが実施できるテストの種類も増やしました。たとえば、ワークステーションには2台のPCが用意され、1台はゲーム専用、もう1台はプロダクトチーム向けの録画とストリーミング用にすることで、バックグラウンドで起動するソフトウェアによるフレームレート遅延やゲームの動作遅延なしに、テストを行えるようになりました。


ラボのこれから

現在、私たちのラボのほとんどはロサンゼルスキャンパスで実施されています。当然のように、これはLoLのグローバルなプレイヤー層を完璧に反映できているとは言えません。私たちは大きな変更のテストを他の地域でも行っており、最近では中国と韓国にチームを送り込んでの“ルーンの再構築(新ルーンシステム)”のテストを行いましたし、それ以前にもリーグクライアントやサモナーズリフトのアップデートを様々な地域でテストしました。しかし残念ながら、国際的なラボを定期的に実施できる体制はまだ確立できていません。これは2018年にラボチームが取り組むべき大きな課題の一つですが、少なくともしばらくの間は、引き続きロサンゼルスがゲームプレイテストの中心となります。

「LAに住んでいてラボに参加したいんだけど、どこで登録できるの?」と聞きたい方もいらっしゃるでしょう。自主参加システムの実現については私たちも色々と考えてみてはいるのですが、現在のところは物理的にも方法論的にも大きな課題が存在するので、難しい状況です。現時点では、プレイヤーラボに参加するための一番の近道はメールの受信ボックスやゲームクライアント内で受け取るアンケートに目を光らせておくことです――テストプレイヤーの採用はすべてアンケートから始まります。

 


お読みくださりありがとうございました!将来登場して欲しいエモートなど、皆さんからのご感想をお待ちしています!

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